タカハッピーな日々

@takahappy

第1話

「皆さま、合格おめでとうございます」

校長だか理事長だか、誰がそう述べていたかはもう覚えていない。もしかしたら違う言葉で大学の入学祝いを述べていたかもしれない。記憶は曖昧で、もやもやと雲のようなものを形容している。しかし、入学式が行われている時、私はずっと心の中でこう呟いていたことだけは確かだ。

「私はこんなところ、来たくなかった」

こんな大学来たくなかった。本当はもっと違う、レベルの高いところに行きたかった。こんなところしか受からなかった自分が悔しい。浪人したらもっといいところにいけたかもしれない。

某大河ドラマで子役が「わしはこんなとこ、きとうなかった!!」と泣くシーンが頭をよぎる。私もその子と同じく人質として大学に連れ出されているのかもしれない。そんな風に考えたかった。いや、考えなければいけなかった。煮えたぎる血を抑えるにはそうするしかなかった。

「○○大学 入学式」という看板の前で母と二人で思い出を切り取った。ぱしゃり。着慣れていないスーツ。シワがよってないブラウス。漆黒の鞄。そして、私のぎこちない笑顔。口角は上がっているものの、目が笑っていない。今見ても「どんだけこの時の私はイライラしていたんだ」と呆れてしまう。

第二志望の大学に前期試験で合格。大学受験は失敗ともとれるし、成功ともとれるだろう。いや、成功だ。大成功だ。だが、私は傲慢すぎる性格ゆえに、「もっと上にいけた」などと思っていた。

いい出会いがあるだろうか、サークルには何に入ろうか、なんてことはほぼ考えていなかった。

周りの女子大生たちが「どこ出身ですかー?」「よろしくお願いしますー!」と挨拶しあってる中、無表情で下を向いた。

どうせ友達なんてできない。気が合いそうにないし。

集合写真を撮った後、すぐに母親のもとへ行き、お昼を食べてそのまま家へ帰った。

無駄なプライド。それが私という人間を作り出していた。




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