第3話

[2014/4/14(Mon) PM4:32]


「一月十九日?じゃあなんでゆうかなの?」

栗林 恵吾(くりばやし けいご)は驚いた様子だ。

「わかんないんです」

長門 夕夏(ながと ゆうか)は少し頬をふくらませていた。

「教えてくれないんですよ、名前の由来。お父さんも、お母さんも」

恵吾は少し考える素振りを見せたが、あまり詮索しない事にしたようだ。

「で、もちろん気づいたと思うけど、隣には吹奏楽部専用の合奏室があるわけだ。」

恵吾が壁を指差した。

「あ、合奏室なんですか?」

「そうだよ。もしかしてクラ口から入ってきた?」

「くらぐち?」

凛南(りんなん)高等学校の3号館には、三つの出入り口がある。新入生である夕夏が名前を把握しきれていないのは当然かもしれない。

「そうそう。正式名称はクラウド口。ただ、みんなクラ口って言ってる。グラ口から入るとわかるよ。合奏室の前通るから。まぁただ、吹奏楽部員と鉢合わせる時ちょっと気まず......」

「ちょっとすいません、ぐらぐちというのは......」

「ごめん、グラス口」

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