SP戦隊マモルンジャー
雲江斬太
祝! カクヨム二周年!
第1話 おれのアイドル
おれはステージの上のジラフちゃんをチラ見した。
彼女はいま、デビュー曲の『駆け抜けてサバンナ』のソロパートを熱唱している。
どぎつい着ぐるみチックな衣装に身を包み、激しいダンスでステージ上を駆け回る彼女たちのグループ名は『サバンナ・
サバンナの野生動物を模した過激なコスプレ。野獣のような重低音で熱唱される楽曲。疾風怒濤という表現がぴったりな、地平線の彼方まで駆け抜けていくような激しいダンス。
5人が5人とも、サバンナの動物を模したキャラクターを与えられており、リーダーでセンターに立つのは、ライオンのコスプレ姿の
おれがいつも応援しているのが、キリンのコスプレをした斑目ジラフちゃんだった。
だがしかし。いまおれは任務中。
恋しい彼女の姿に目を釘付けにしているわけにはいかない。
おれは、彼女の歌声に耳を傾けつつも、観客たちの方へ視線をもどす。
集中しろ。いまのおれは、ジラフちゃんの一ファンではない。SPとして、警護対象である斑目ジラフを、この身に代えても守る。それがおれの任務だ。
おれは客席の観客たちに意識を集中する。
『サバンナ・5』の歌と踊りに合わせて熱狂するファンたち。ある者は拳を突きあげ、ある者は脚立の上に立って一眼レフカメラを構えている。羨ましい。あの男に頼んでジラフちゃんの画像を分けて貰うわけにはいかないだろうか?
いやいや。いまは任務中。集中しろ。
怪しい動きをしている奴はいないか? 急に飛び出してステージに上がろうとする奴は? 構えたカメラから妙な液体を飛ばそうとしている変態はいないか? 集中して観察するのだ。それがおれの、いまの任務なのだ。
ほどなくして、梅屋デパートの屋上で開催されたミニコンサートは無事に終わった。
なにごともなく、イベントは終了し、『サバンナ・5』の5人は、にこやかに手を振りながらステージから降りて、袖に引っ込んでゆく。
ここからは、デパートの警備員に任せて、おれは出口の出待ち警護に回らなければならない。
屋上から自動ドアをくぐって館内に入り、エレベーターで降りると、デパート裏の従業員通用口まで移動し、そこで待機する。
『サバンナ・5』は、まだまだ駆け出しのアイドル・グループだ。
イベント会場まで事務所の車で送り迎えなんて身分ではない。彼女たちメンバーは、自宅から会場まで電車やバスを乗り継いで、各自で移動している。
その間の警護もおれの任務。
おれは、気づかれないように待機し、待つこと十数分。
従業員通用口から、ふつうの従業員にまじって出て来た斑目ジラフの姿をとらえ、極秘ガードの任務についた。
斑目ジラフ。本名水島加奈子。出身は静岡県清水市。母親の名前は洋子。週一で手紙を出している。いつも娘の健康に気をつかっている母親洋子さんのためにも、おれは彼女をきっちり家までガードする義務がある。
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