昔話

今は昔、とある島にリカオンと言ふ者ありける。セルリアンハンターにて、事繁ことしげく働きける。


ひとひに、森の中歩きたる時、ラッキービーストを見付く。

よく見れば、尻尾あらず。


リカオンいみじくあはれなりと思いて、図書館まで運びたる。


図書館に着きたりければ、博士助手、


「何や何や」


と言ひ、現る。


「あやしボス、森の中にて見つけたり。

尻尾無く、いと心苦し」


「あな、いみじや」


助手、驚きける。


「この図書館に道具あらむ。探るべし」


三人で探し候所そうろうどころ、工具見つかりける。しかれど、大事を忘れり。尾のしろなる物無し。


「あな、あさましける。尾の代、持ち無し」

リカオン、二人の頭守まぼりたる。


「如何に我々、守りたる」と、博士尋ぬれば、


「二人の頭にありける羽、ボスの尾に、合ひけり」と言ふ。るに二人、く顔浮かべたり。


「否、我々の羽、ボスに合はず」


「我々の羽、飾りならず」


と言ひけるが、リカオン、尻尾なきボス

いと心苦しく思ひて、羽狙いたる。

ふと、二人に近付き、羽取りつ。


「我々の羽取るべからず」


「来るな来るな」


罵りし声聞こえたり。

詮、リカオン二人の羽得たり。


「あな、痛し」


「無下なり」


二人を思ひ消ち、リカオン、工具用ゐて直したり。


『我、ラッキービーストなり』


と、声聞こゆれば、リカオン喜びたり。


その後、白と茶色の羽持ちたるボス、

リカオンと共に、末永く働きけり。

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