花火は美しく、人の記憶は儚い
藤宮 結人
第1話 異世界での我の立場
昼過ぎの午後12時10分。太陽の日差しが絶えずして窓際の生徒らを照らす時間が始まった。
彼らにとって授業なんか比にならないくらい気になる光は一人一人の心をイラつかせてるに違いない。逆に廊下側の生徒は先生の言葉を一言一句ノートに書き留めている。涼しい顔してその大半がメガネ組。
特に一番廊下に近い「
つまり完璧なのである。完全無欠なのである。お嬢様なのである。実際、学校にはファンクラブが学校公認で創設されているとか。そして会員の中に国会議員も在籍しているとか、そういった噂が後を絶たない。
この学校の特色として席替えの際に中間試験の点数によって席が決まるという校則が存在する。国、数、英、理、社の五教科の総合点数350点以上で廊下側の席に、349点以下で窓際の席になる。だから岸波の隣、もしくは後ろ、前に関して毎回クラス内で戦争が起きる。男女問わず、天才たちが鎬を削る。
・・・・・・・・因みに我「クレミア・コルゼリオ」は窓際の一番近い後ろの席。このクラスの中で直射日光が強く、長く当たる席。そしてそこに座る生徒は「クラス1頭が残念な生徒」の肩書を背負わされる。これがどういうことを指すのかというと
「いじめの対象」になるということ。
我が来たゴールデンウィーク明の5月7日。その1か月前までは前の「
そして先々週の中間テストで海馬が総合点数116点、対して我は14点。当然席替えでここの席に座らされた。同時にいじめの対象になった。
・・・・・・・・だがここ2週間、嫌がらせという嫌がらせはされてない。
「教科書10ページ。1行目から。そうだな今日は5月28日、5+28で・・・・33番クレミア。お前読んでみろ」
3時間目は国語で竹取物語の「蓬莱の玉の枝」を勉強している最中。いつもの安直な指し方で本文を読まされる義務が課せられた。
やれやれと重い腰を上げ教科書を読む。不思議とクラスのみんながやけに注目していたが気にせず読む。
「えとぉ、よいまう。いあわむあい、たえといのおいなというものあいえい。のやまにま・・まい?・・・・・まいい?」
「もういい。くぅ、れみあそれ以上読むな、腹がちぎれるwwwwww」
先生が腹を抱えていた。というかみんな笑っている。
・・・・・・どうしてみんな笑ってるの?
疑問が頭を駆け巡る。なぜ笑われてるのか、今はそれが気になって他は考えられない。黙って大人しく座るがやはり気になる。
首を傾げ、眉を顰める我を隣の「河井
不思議が不思議を呼んで頭が混乱する。だがその疑問は直ぐに解消されることとなる。それは3時間目が終わり、生徒たちが午前の授業から解放されながらも午後の授業を憂鬱に感じ始める給食の時間に海馬が言ったこと。
「クラリオあれはないぜ。勉強の成果がまるで出てない」
給食の時間恒例バカ三人衆とクラス内で言われた海馬と河井と机をトライアングルの形に揃える。海馬は購買部の超人気黒毛和牛バーガーを、河井は実家が料亭とあって重箱に和食を詰め込んだ超ゴージャスなランチ。それを片目に机から一冊のノートと2Bの鉛筆を取り出す。ランチボックスを出しているにも関わらず全く手を付けない姿は今となっては珍しくない。
「どういうことなの。せつめいをもとむ」
手に力を込め、2人に見えるように濃くはっきりと大きく書く。案の定2人に伝わったのでノートと鉛筆を海馬に渡した。慣れた鉛筆使いで我の4分の1の時間で説明文を書いた。
「ほぼ母音言葉直ってねぇぞ。
冗談じゃない。あの人の良いところと言えば精々顔だけだ。内面はそれはそれは腹黒でいじめなんかまだ可愛い悪戯に過ぎないと思えてしまう。
力尽くでコミュニケーションツールを奪い返す。そして拒否の念を込めて苦笑いを向けてやる。
「2人とも、もうランチタイム終わったよ」
せっかく海馬の鬼提案を断ったのに嘲笑うように時刻は12時40分、給食終了時間を指し示していた。河井は重箱を空にして我と海馬が食べ終わるのをずっと待ち続けていた。・・・・・・・・昼休みに部活の集会があるというに。
河井を早く行かせる為にもと横に置いたランチボックスを開ける。
・・・・・・・なんじゃこれは。
ランチボックスは2段式でご飯が入ってるのは1段目。そこには海苔でタイミングを見計らったかのようにこう書かれていた。
・・・・・・・「こんしゅうのどようび、べんきょうかいやるから」
ゾッとした。あの人に見張られてる感じがする。また鬼教官による合宿が予定されていたとは驚いた。しかし今はそんなことは後回しして海苔弁当を黙って食べることが先決。とっくに海馬は食べ終えたみたいで残るは我だけになっていた。
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