第14話 朝比奈とミチル
五月四日。妹見たさにくることになった変わり者達。
手を出さないことを祈りたい。
俺は部屋で小説を書いているとインターホンがなる。その音は俺の情が乱れる幕開けに過ぎないが。俺は、急いでパソコンをしまい、部屋を出る。
玄関に着くと、人影がいくつも見える。まあ、四人でくるのだから、いくつも見えたところで、おかしいことはない。
「上がっていいよ」
俺は、ドアを開け、ぶっきらぼうに言った。
「お邪魔しまーす」
あの四人は、そんな俺の言葉など気にしないのだろうか。いつもの下心のままである。
「美玲ちゃんは、どこだ?」
更科は、周りをキョロキョロ見渡している。見渡さなくてもいないことは一目瞭然だと思うが。
「ミチル、美玲」
俺は、二階にいるであろう二人に声をかける。
「はーい。今から行きます。お兄様」
二階から美玲の声が聞こえる。語尾にハートがついていたかのように聞こえたが気のせいだろうか。
その後から、いかに女の子らしい歩き方で階段を降りてくる。歩く姿は百合の花と言われているだけあって油断さえ見せない。さすがである。
「ミチルは?」
美玲はすぐに来たのに、二階から、忙いでいるようなそんな音がしない。
何をしているのだろうか。
「着替えていているのではないでしょうか」
まるで、興味がないとでもいうかのような口ぶりだ。
「なあ、日影、早く俺らを紹介させろよ」
美玲が来たから始めたがる更科が、美玲を見てにやけている。
「兄さん、ごめん」
二階から、白いブラウスにロングスカートをはいた少女が降りてくる。
俺は一瞬天使かと思ってしまうほどキレイで、かわいらしい。そう、これは、滅多に女の子の姿にならないまれなミチルだ。
「かわいい」
朝比奈だろうか。後ろから俺と同じ感想のダチがいるようだ。俺は、心の底から喜んだが、同時に胸の奥でモヤモヤしたような気がする。
朝比奈は、俺の視界を遮るかのように前に出てくる
「俺、日影のダチの朝比奈碧斗。お願いがあるんだけどいいかな。」
俺からは、朝比奈の表情は見えないが、いつもの朝比奈とは違う雰囲気に見える。
それは、いい筆者体を見つけたからなのかはわからない。
「その、えっと……」
服が慣れていないからか、少しモジモジしている。それに加わり緊張もしているのだろう。まあ、これが本当のミチルなのだが。あと、今気づいたがブラが透けている。
「ミチルちゃん、久しぶり」
輝は、そんなミチルを察したのか緊張を溶かそうとしている。昔から、輝は、そんな優しい一面あったよな。俺は今更ながら感心する。
「はい、お久しぶりです」
ミチルの表情はまだ硬い。まあ、人見知りなのだから仕方ない。
「ところでさ、ミチルちゃん、モデルになって」
あたりに静けさが漂う。ミチルは、数秒遅れて、朝比奈から遠ざかろうとしている。それでも、朝比奈は引かない。獲物を狙う狼のように朝比奈は、ミチルに近づいてくる。
「ミチルちゃん。君は、僕が出会った中で一番の筆写体なんだ。お願い」
朝比奈は、ミチルの腕を掴む。もし、友ではなかったら俺は殴りかかっていた。ミチルは、これをどう捉えるのだろうか。
「そんなことありえませんよ。だって私は」
ミチルは、拳を握り始める。それには、何かが詰まっていそう気がする。
「私なんか、ここにいる資格なんかないのですからっ」
ミチルは、急いで階段を駆け上がっていく。俺は、そのあとを追うとしたが、朝比奈が必死な表情で駆け出していった。
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