第9話おれってエロいわけ?
それに制服じゃないみんなを見ていると、みんながやけに大人びて、シャレたファッションをしているように思える。
おれなんか無地の黒いTシャツに安物のジーパンといった姿だ。自分がダサく感じてしまう。
なにせ母さんが買ってきたものを着ていることもあるくらいなんだ。幸い今日のTシャツとジーパンは自分で買ってきたものだ。みんなに合わせようと思うと、もうちょっとがんばらなくちゃいけないな。
ふらふらと階段の上をのぞくようにして見ると、そこにも人がいっぱいいる。どうやらA クラスとBクラスは二階のようだ。
いつかこの階段をのぼってやる。今に見てろよ。上にいるやつら。あいつらはおれの目標だ。
「安楽くん。なにしてんの?」
いきなり後ろから冴嶋さんに声をかけられたので、おれは、「おわっ」、なんて声を出して驚いた。
「ちょっと初めてでいろいろわかんないんだよ。知ってるやつもあんまいねーし」
そういや冴嶋さんはいるのだけれど、丸谷さんの姿が見えねえなあ。丸谷さんのことだから、二階のAクラスにでも入ってるのかなあ。
それを冴嶋さんに一瞬、聞いてみようかと思ったのだ。だけどなんだか聞きづらい。態度がぎこちなくなる。
冴嶋さんを、きょろきょろと上から下まで見回してしまった。
「なにそれ? 私の顔になにかついてる? おかしいんだ。ぷぷぷ。なんだか退屈そうね。塾って退屈だよねー。学校よりはましかもしれないけどさあ。規則とかあんまないしさあ。同じ勉強するにしてもだよ。学校よりは楽しいよ」
冴嶋さんがわらってくれたおかげで、おれも肩の力が抜けた。
「う~ん。まあそうだな。それよりさあ。いつも一緒にいる丸谷さんはどうしたんだ? あいつ金持ちそうだから、どっかいい塾にでもいってんだろうな」
すらっといえた方だと我ながら感心した。
「ううん。丸谷さんは塾なんていってないよ。なんかα会っていう通信教育してるみたいだよ。まあ、夏期講習だけはいってるみたいだけどねえ。とっぽびゼミナールって電車で三駅いったとこ。なに? 丸谷さんが気になるわけ?」
「いやあ、そういうわけじゃないよ。あいつ頭いいだろ? だからすげえいい塾いって勉強してんだろなあって思っただけだよ」
おれはすげえ焦って、いいわけがましく、早口になってしまった。
「安楽くんって意外とエロいんだねえ。丸谷さんが気になるのかあ」
「エロくなんてねーし! 全然そんなことないって。なんも気にならねーし!」
おれは顔を赤くしてまたいいわけをしなくちゃならなくなった。
「ほんとかなあ。その通りですって顔に書いてあるよ」
冴嶋さんは声を立てて笑い出した。
「ばかなこといってないで、さあ、次の授業が始まっちゃうぞ」
廊下にいたみんなは、ガヤガヤ騒ぎながら教室に入っていった。。。
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