第2話 根岸・・・そして、桜台南

 そして、中学、最後の夏休みが始まった。

 おれは受験勉強に専念しようと決め、突然やる気を出した。受験まで一年の半分ほどしかない。

 それは、どうしてもいきたい高校があったからだった。

 中学二年生の時に、おれは電車で、街へ一人でモデルガンを買いに出かけた。その帰りの電車の中で、ある高校生に声をかけられたのだ。

「君、まだ中学生だろ? 一人で街へいってきたのか?」

「ええ、そうですけど」

「俺は君みたいな時は、一人でなんて怖くていけなかったけどなあ。度胸あるな。俺は桜台南高校一年の根岸っていうんだ。君は?」

「西山第二中学二年の安楽です。安楽翔です」

「そうかあ。俺と同じ学区内だな。よかったら君、桜台南にこいよ。一緒にサッカーやろうぜ。俺、サッカー部なんだ」

「お、おれもなんです。サイドミッドフィルダーやってます。できたらですけど桜台南にいきます」

「できたらじゃない。絶対こいよ! 待ってるからな」

 根岸さんは、おれの目の前で親指を立てるようなポーズをした。

 なんだかその時の根岸さんは、まるでJリーガーみたいにキラキラ輝いて、かっこよく見えた。

 おれは年上の人に声をかけられたってだけでうれしかった。しかも同じサッカー部だというじゃないか。

 根岸さんと約束したんだ。だからおれは絶対桜台南にいかなくちゃならない。根岸さんにもう一度会いたいんだ。そして一緒にサッカーをしたい。

 だが、今のおれの学力では到底桜台南には受からない。桜台南はこの学級では上から二番目の高校だった。。。

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