剣と魔法と国交正常化作戦

りあ

第1話 Ⅰ 召喚

 青白く光る球が浮かぶ暗い空間。


 普段はステンドグラスを通して綺麗な日光を通す窓はすべて塞がれいる。


 天井が高い石造りの広い円形の部屋。


 暗い色のローブを来た人影が何十人と立っていた。


 全員が肩を並べ部屋の中心を向き、何重の円を形作るように陣形を作っている。


 フードを深く被り顔が識別できる者はいない。


 床と天井には陣が掘られいる。


「これより創生の神子の召喚の義を行います」


 幼い少女の声が反響する。


 少女はひとり、他の者たちを違う白いローブを身に着け、一番中心に近い円陣の中にいた。


「このために国中から集められた強力な魔法力を持つ者たちよ……その力を惜しみなく陣に流し込んでください」


 床に掘られた陣が仄かに光始める。連動するように天井の陣も光始める。


 空間にはピリピリとした緊張感が満ちていた。魔法使いたちは冷たい陣の光に照らされる。


「そうです……徐々にそして維持を……」


 陣の光は増し、暗い空間が明るくなる。幻想的な青白い光に包まれる。



「これより、召喚を開始します!」



 少女が片手の分厚い本を開き、詠唱を始める。


 聞いたこともない言語は詠唱に合わせて空間に象形文字に似た記号を浮かび上がらせる。


 陣の光は更に増している。陣から風が吹き荒れローブを揺らす。


 陣の輝きに比例し、そよ風程度だったが暴風のように縦横無尽に吹き荒れるようになってきた。


「う、ぐ……」


 ドサ……と、円から離れた円陣の人物たちが倒れていく。


 皆、歯を食いしばり、脂汗を流しながらも魔法力を陣に流していく。


 


 ザザザザザ―――



 突然青白い光が赤黒い光に変わり、風が稲妻になる。


「これは……ッここで中断したほうが危険です。継続します!」


 少女は声がかき消されないように叫ぶ声になる。


 魔法力の限界で倒れる者に加え、稲妻に当たり倒れる者も続出した。


「周辺の待機部隊に障壁魔法を張るように命じてください!」


 少女が叫ぶと周辺に待機していたローブを着た魔法使いたちが陣を中心に円柱状に障壁を張り始める。


 半透明の障壁は厚みを増していく。


 


 バキバキバキ―――



 稲妻が石壁に当たり穴を開ける。


 日光が陣に降り注ぐ。


 日光が当たった陣は発火する。


「私たちにはもう……失敗は許されないのです……!!」


 少女は出せる限りの声で叫ぶ。足元の炎に飲まれかけながらも使命を全うするために。


「全部の魔法力を陣に流し込んでくださ……」




 国中から集めた強力な魔法力を持つ者たちのすべての魔法力を溜めこんだ陣は大爆発した。


 儀式が行われていた大聖堂と呼ばれる建物を吹き飛ばし、辺りに衝撃波を与えた。


 障壁のおかげで瓦礫が飛び散ることはなかったが、衝撃波で周りの魔法使いは吹き飛ばされる。




 わずかな時間、空に伸びる白い光。それは国のどこからでも確認できた。


 数秒遅れて届く爆発音。国民は儀式の失敗に唇を噛みしめた。

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