毎日とりあえず頑張ろう。

桜佐衣

2018 /3/15(木)

最近、薬の副作用で落ち着きがない。


車に乗っていても、床は蹴るわ、窓は叩くわ、大声を上げるわ。


自分でもコントロールが効かない時がある。


決して、頭がおかしいわけではない。


私の、本人の意識は正常なんだけれども、体本体だけが勝手に動いてしまう感じ。


腕を動かして、窓を叩かないと、


床を地団太を踏むように強く蹴らないと、


落ち着かないし、イライラして止まらない。


そんなことが続いて、症状を主治医さんに伝えてから2度目の診察日。


「落ち着かない感じはどうですか?」


私(30歳)の主治医さん(何歳くらいかは知らない。多分30代から40代?)は、とても親切で、いろいろなことを親身になって聞いてくださる、感謝してもしきれない先生。


この日も、先生はそう切り出してきた。


正午過ぎ、診察室に入って、回転椅子に腰かけ、母も横でパイプ椅子に座って、診察はスタート。


私「ロナセンを半錠減らして、ワイパックスを1錠増やしてから、数日は落ち着いてたんですけど…」


ロナセンは基本…


【ネット調べ】

統合失調症に通常投薬される、薬。

ワイパックスはまだ調べてない…。


私「それから少ししてやっぱり落ち着かないのが戻ってきて…」(頭をカリカリ。)


先生「(パソコンのキーボード打ってる)…えぇ、えぇ」


私「それで…眠るのも今は昼夜逆転してて…夜中に起きてるんですけど」


先生「えぇ」


本当、よく聞いてくださる先生だなぁって思う。


私「いろんな雑念が湧いてきて、耐えられなくなって、カッターを探したんですけど、母が隠してしまったので、仕方なくキッチンに行って、包丁でまた腕を切りました…」


先生「え?切ったんですか?」


私「はい」


先生(キーボード打つ)「切ってる時痛くはないんですか?」


私「痛いような、痛くないような」


先生「…切ると、どういう気持ちになるんですか?」


私「(確か小首傾げてた)嬉しいっていうか…ホッとするっていうか」


先生「…あぁ、ホッとする(キーボードを打つ)」


先生がキーボードを打っている間、何を見るでもなくテーブルを見ていると。

先生が徐に、


先生「み、見なくていいですか?」


私(視線上げ)「…え?」


先生「切った跡。見なくていいですか?」


私「あぁ…」


以前何回目前かに、初めて自傷行為をしていることを伝えた時に、メモ紙を見せて自分から見せたからだと思う。


私(苦笑)「ちょっとイカ焼きみたいになっちゃいましたけど…」


先生「いえいえ…」


私が左腕の袖を上げ、左腕を見せると。


先生「あぁ、案外と浅い傷ですね」


…浅いんだ、私の場合は。

みんな切ってる人はどんだけ深く恨み深く切ってるんだ…。


私の場合は、感情的になって切ってること多い。


「何で私はこうなんだ」

「もう消えたい、死にたい」

「ごめんなさい」


そんなかんじ。

後はただ、無償なストレス。イライラから。


先生(パソコンに戻って、またキーボード打ち始める)


私「それで、朝方になると、多分統合失調症の症状と、強迫観念だと思うんですけど…その…」


これはよく覚えてる。


顔を両手で覆って、言いにくかった。本当に。


私「頭の中で声がするんです。明らかに男の人の声だと思うんですけど、女の人の声じゃない。それで、母とかを殺せって言ってくるんです」


ほっぺたを両手でペタリ。ガーンに似たポーズ。


私(失笑しながら)「それで、今日が診察日だからだと思うんですけど…。その…『先生を刺せ』とか、『先生を殺せ』とか」


先生「へぇ…それぁ、辛いですね(患者さんの痛みにどこまでも寄り添ってくれるこの先生は、いつもこんな風な共感の声を出してくださる。)」


先生「そっかぁ…(腕組みして椅子にもたれて)それはきついかもなぁ」


この時のこの先生の態度を見て、私の頭の中の人格がまたおかしなことを言っていた。


【クスクス(笑)】


【お前が苦しいって本気で思ってるぞ、この先生。だろ?】


私「…っ!!?(頭を片手で押さえる私)」


断じて言う。


私は苦しんでいるふりをして、こんなことをこの場で言っている訳ではない。


毎日、本当にしんどい。


多分、人に嫌われることを切に恐れている私の深層心理が働いて、この場で、実際に本当に聞かれたらこの先生に幻滅される、もしくは嫌われ軽蔑されると思われる言葉を、もう一つの人格が私に囁きかけているのだと思われる。


『実際に、本当に聞かれていたら』とはどういう意味かと言うと、統合失調症の症状には面白いというか、珍しい考えの症状があるからだ。


それが、ドラマ『サトラレ』。何とか伝播とかいうもの。


自分の考えや頭の中が、他人に周りの人に聞かれ、あるいは覗かれている、知られていると感じてしまう症状だ。


私も、この症状が症状だと理解し、受け入れるには何年もかかった。

今も、8割信じているが。


先生(姿勢を正して)「日中はどんなことをしてますか?」


私「イラスト描いたり…とか」


『イラスト』とは、デジタルの絵。動物のキャラや、人物型のシンプルなデザインのイラストをベジェ線で描く。


私「…あ」


その時、思い出した。


その日の朝、先生と看護師さんに見せて見たくなって、イラストをパソコンで印刷したのである。

下手だけど…こんなの描いてます…と。

ここまで回復してますよ、と。


先生「日中にそういう体を動かすことをできればいいかもしれませんね」


そうして、またキーボードを打つ。


先生「前にも言いましたけど、デイケアとか行かれたりって言う気はないですか?」


私(ちょっと迷ってから…)「行って見たいです」


以前はしんどかったから拒否ったが、今なら逆にリハビリだと思って行きたい。

人との交流は大事にしたい。


しかし、母は違う。


母「そういうのは…ちょっと…」


無理もない。


私達が住んでいるのは広くない地区だ。ご近所さんたちとのかかわりあいも強い。


近くのデイケアなどに行ってしまえば、私が精神疾患を患っていることなど、近所どころではなく知られてしまうだろう。


先生は理解してくれたのだろうか。



正直、ここのところの記憶はない。



何故なら、私はある症状と、この時戦っていたからだ。


イライラして、体が勝手に動きそう。


少し焦ったような感情。


手がカクカクと動き出す。


そこで、診察の終り、先生は薬の調整に入った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る