ニューラルの先に
衣谷一
挙式当日
挙式当日::1.式の夜
吉澤浩介にとってみれば、その日は独身最後の日、これから訪れる最大の幸せを前にした凪の日だった。式場までの行き先がマップアプリに示されている。幸福のウェディングロードだ。でもその道を共にゆく伴侶のことを考えると、画面に映っているものが単なるグネグネの連なりとしか思えなくなってしまうのだ。
テレビもついていなければ、パソコンも立ち上がっていない。部屋の明かりもつけていない。ただただ、スマートフォンの画面が明かり代わりになっている様相。消えてしまえば真っ暗、何も見えなくなってしまう。
それでもいいじゃない、吉澤は部屋で一人にやり笑うのである。吉澤は考えるのも嫌になってしまっている。どうしてこのような仕打ちを受けなければならないのか、理解ができなかったし受け入れることもできなかった。活力をほとんど失っているから何もできずにいるが、時間が立ってからはたして落ち着いていられるかどうか分からなかった。
スマートフォンの画面が切れる。
暗闇に、吉澤のむせび泣く声が響いた。
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