クリスマスの奇跡
シノマ
第1話
突然だが私は、不治の病だ。
物心ついた時から病院のベッドの上で過ごしている。
外に出たいと思うけど、お医者さんとお兄ちゃんに止められて外に出たことがない。
私が知っている外の世界はこの病室の窓から見える景色だけだった。
外に出れない私がこの入院生活で楽しみなことといえば、お兄ちゃんのお話だ。
お兄ちゃんに聞かせてもらうお話はいつもありえない話ばかりだけど私の支えになってくれている。
そのお兄ちゃんが今日亡くなったと連絡が届いた。
私の唯一の肉親のお兄ちゃんが亡くなって私は、天涯孤独になってしまった。
もう生きる意志が無くなり、いつ死んでもいい、そんなことを考えてしまう。
お兄ちゃんが亡くなって1年が経過した今日、ふと外の景色が見たくなったので窓を見てみるとしんしんと雪が降っていて、クリスマスイヴだったことを思いだす。
「今日はクリスマスイヴか……」
クリスマスになるとお兄ちゃんが手作りケーキを持って来てくれてたこと思い出し潤んだ瞳から悲しみのかけらがこぼれ落ちた。
すると外から鈴の音が耳に響いてくる。
窓を開け雪が降り注ぐ空を見てみると、トナカイがソリを引いてこっちに向かって来ていた。
「いやぁ外は寒いね。中に入れてもらっても大丈夫かい?」
私が返事をする前にソリに乗ったお兄さんは窓から部屋に入って来た。
「あの……誰ですか?」
「挨拶が遅れたね。僕はサンタクロースさ、まぁ今日が初めての仕事だけどね。ハハハハハ」
私は、唖然としていた。
唖然とした理由は2つだ、まず1つはトナカイにソリを引かせて登場したことだ。
そして2つ目は全然サンタクロースには見えないことだ、私の知っているサンタさんは赤いサンタ服を着ているが今私の目の前にいるサンタと名乗っているお兄さんは、黒いサンタ服を着ている。
私はじーっとサンタさんと名乗ったお兄さんを見つめていた。
「どうしたのかな、そんなジト目で見つめられると照れちゃうな」
「なんで照れるんですか……それで私に何か用ですか?」
「そうそうそれが本題なんだけど、さっきも言ったけど僕はねサンタクロースとしての仕事が今日が初めてでね。お嬢さん、君にクリスマスプレゼントを届けに来たんだよ」
サンタさんがそう言って私に一通の手紙と箱を渡して頭を撫でてくる。
「頭を撫でないでください……」
「おっとこれは失礼、これは癖なんだよね。それでその手紙と箱は君のお兄さんからのプレゼントなんだよ。」
2度目の唖然、なんで亡くなったはずのお兄ちゃんからプレゼントが届くのか私は疑問に思い、少し考えてから結論を出した。
「あなた嘘つきですね、何が目的ですか。お兄ちゃんのことを出してまで……私を攫いにきたんですか?」
「いや、嘘じゃないよ。僕はサンタクロースだし、そのプレゼントは正真正銘、君のお兄さんからだ。証拠に手紙を見てみるといい」
そう言われて私は手紙を開いてみる。
その手紙には、確かにお兄ちゃんの筆跡で書かれていたのだ。
いつの間にか私は手紙を目で追っていた。
『まず始めにごめんな。俺は君の成長を見届けられないまま死んでしまって……。許してくれとは言わない、俺が死んで君がどのくらい傷ついたかなんて見なくてもわかる、だけど心を強く持って生きてくれ、それが俺の唯一の願いだ。さて暗い話はこれぐらいにして今日はクリスマスイヴだろ。だからな俺からのクリスマスプレゼントにいつもクリスマスに作っていたクリスマスケーキをプレゼントすることにしたんだ。丹精込めて作ったから期待してくれ。最後になるがもう1つプレゼントを用意しているんだ。それは明日、クリスマスの日の楽しみにしといてくれよ。生きろよ、俺の大事な妹……マナ』
手紙を読み終えた私は泣きじゃくっていた。
そんな姿を見ていたサンタさんが私を抱きしめてくれて嬉しかったし、暖かった。
私は、ほんと幸せ者だと実感できる。
「さて僕は帰ろうかな、仕事も終わったことだしね。じゃあねマナちゃん」
「待ってサンタさん帰る前に一緒にケーキ食べませんか?」
サンタさんはきょとんとした顔をする。
「いいのかい?そのケーキはマナちゃんのお兄さんが君に作ったケーキだろ?」
「私1人でこれ全部食べられませんよ。それに一緒に食べた方がたのしいです」
「なら、お言葉に甘えようかな」
それから私とサンタさんは一緒にケーキを食べたりゲームをしたりして楽しんだ。
サンタさんが思ったよりゲームが弱かったと思ったのは内緒です。
クリスマスパーティーで、はしゃぎ過ぎたのか私はいつの間にか眠っていました。
ーーーーーー
やっと眠ってくれたかな。
僕は少女が眠るのを待っていた。
「さて最後の仕事に取り掛かりますか。マナちゃんの病気を治す3つ目のプレゼント」
この世では絶対治せない病気でも、あっちの世界ならどんな病気を治す薬がある。
その薬を届けて欲しいそれが3つ目のプレゼントだ。
僕はその薬を寝ている少女に起こさないように飲ませた。
「さてこれで僕の仕事も本当に終わりだ。楽しかったよマナちゃん元気で」
外に出て待たせてあるトナカイの頭を撫でた後ソリで帰っていった。
ーーーーーー
目が覚めるといつも朝だった。
サンタさんもいない。
昨日までの事は夢だったのだろうかと思ったその時、いつもより体に力が入ってることに気づいた。
今なら歩けるかもしれないと思い、立とうとしたら自分の足で立てた。歩けた。
「私、立ててる……歩けてる……」
心の底から湧き出る歓喜に泣いていた。
「お兄ちゃんの手紙に書いてあった最後のプレゼントってこれの事だったんだ」
私は、ただただ嬉しくて自分の足で外に向かうのである。
クリスマスの奇跡 シノマ @Mokubosi
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