西雲が直面する現実


 三笠を過去に炎上させ、追い込んだ炎上勢力がいた。

彼らの目的は芸能事務所AとJのアイドルを唯一神とした日本のコンテンツ市場を生み出す事らしい。

しかし、その目的は勢力によって変化しているらしく、行動をしなかった時には活動休止ともネット上で疑われたほどである。

その勢力に目を付けられたのは、まさかとも言えるような人物――西雲春南(にしぐも・はるな)だった。

何故、彼女を狙ったのかは明らかではない。一つだけ言えるとすれば、彼女も過去にネット炎上勢力と似た事をしていた噂がある事。



 過去の西雲は今のような性格ではなかった。単純に承認欲求に飢えていたつぶやきユーザーと過去を知っている人物は語る。

しかし、その人物の証言も偽者である可能性は高く――正確なソースを求める声もあった。

政治でも経済でも、あるいはサブカルでも――正確な証拠を求める声が出るのは当然だろう。

偽の情報が拡散するのは、息をする位に一瞬で拡散し、ネット炎上させる事も容易だ。

だからこそ、SNSテロと言うパワーワードが生まれ、これが一種のデスゲームとひと括りに――されているのかもしれない。



 自分が今見ている光景は、まさに過去に否定していた光景のデジャブだった。出来る事なら、この現実だけは直視したくない。

しかし、否定し続けていたとしても――他のコンテンツで同じような事が繰り返され、芸能事務所AとJのアイドルが日本を制圧するのは――。

その世界は何度もWEB小説で書かれていた題材でもあるのだが、何度もスルーされ続けていた。その結果が、この世界におけるネット炎上を生み出したのである。

「自分は――あの警告を軽い気持ちで否定して、最終的には――」

 あの時にチェックしていたWEB小説は現実となってしまった。しかも、最悪な形で。

止めようとすれば止められたかもしれないが――全ては遅すぎたのである。



 結局、今回も過去と同じく何もできない状態で傍観者となってしまうのか?

違う――今回は違う。今はランダムフィールド・パルクールのプレイヤーでもある。だから、今回は傍観者じゃない。

あの時は――プレイしていなかったゲームだった、あるいは未チェックの作品だったから――。

今は違う。絶対、同じような炎上案件を起こせば――今度こそSNSテロはデスゲームに匹敵するか、あるいはデスゲームと化してしまう。

「悲劇を繰り返してはいけない。悲劇の連鎖を――無差別テロは起こすべきではないのよ」

 西雲は決意する。過去をなかった事にするのは簡単だろう。しかし、そこから学ぶべき部分はあるはずなのだ。

だからこそ――今度は自分が悲劇を止めて見せる――。その力が微力だったとしても、必ず悲劇を買える事は出来るのだから。



 3月1日――この日は晴天となった。雲ひとつない光景は、まるで西雲の中にあった迷いが消えたようでも――あったのかもしれない。

「迷っていられない。とにかく、行動して――目立って、認めてもらえるような実力を得て、自分の――」

 西軍は決意を新たにARガジェットを起動し、ランダムフィールドのステージに立つ。

例え、今はレベルが低くても構わない。勝者が絶対という空気も否定しない。敗北して炎上するのであれば、それもやむ得ないと割り切る。

彼女の眼は、過去の出来事に背を向けていた以前とは違い――輝いているようにも見えた。



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