真相は何処に
午後2時30分、黒騎士ナガトも動き出し――炎上勢力を片づけていく。ナガトは単純に炎上勢力を目障りとみている訳ではない。彼らにも相応の理由があるからこそ、炎上行為に手を出すのだ。
単純に撃破していく方もいるかもしれないが、そちらはナガトの名前を騙っているだけの偽者――と言うべきだろう。
『そのような単純な理由でネットを炎上させるのか――ちっぽけな自分の自己満足の為に!』
ある炎上勢力の人物を追い詰めた際、ナガトは彼にこう言った。しかし、それを素直に聞き入れるようであれば――強硬手段には出なかっただろう。
ナガトの追い詰めたこの人物は、炎上勢力でも単独犯だったが――チーム単位で動いている勢力もいるはずだ。そうした勢力を止めなければいけない――ナガトは表情には見せていないが、彼らの動きに対して動揺をしているのかもしれない。
この他にもナガトは複数のネット炎上勢力を倒していく。しかし、彼らを結び付けているのは犯罪に悪用されているSNSだけなのか?
そうではない何かが――絶対にあるはずだ。それだけがナガトを突き動かしている可能性が高い。
同時刻、ダークバハムートはある人物と合流する為に草加駅に足を踏み入れる。その一方でダークバハムートを目撃してもスマホで写真を撮ろうと言う人物は減っていた。
(一人のマナー違反が、連鎖していき――ネット炎上のネタとして利用される。結局は――)
周囲の光景に若干の物寂しさ――しかし、それを変えていって盛り上げていきたいと彼は決意表明をする。
(パルクールで起きている異変を――ここに持ち込むべきではないのかもしれない)
しばらくして、彼はセンターモニターにある人物が出ていた事に気付き――モニター付近へと向かう。
「まさか――そんな馬鹿な事が」
ダークバハムートの見ていた映像、それはミカサのプレイ光景だった。既に連戦しているようだが、疲れている表情はない。バイザーの影響で顔が見えないので――本当に疲れているのかは本人にしか分からないだろう。
ARゲームではバイザーで顔を隠せる事を利用して影武者や身代わり等が出来るのでは――と言われている。しかし、そうしたプレイをすれば不正プレイと判定され、ライセンスが凍結するのは言うまでもない。
【信じられない】
【本当にミカサなのか?】
【似たようなアーマーは見覚えがある。影武者では?】
流れてくるコメントでも影武者や偽者を疑う声もある。あれだけの反応速度で圧倒すれば、チートと認定したがるプレイヤーが炎上させるのは――明らかだ。
「あの動きは――どういう、事だ」
彼は反応速度ではなく、彼はプロのライバル選手を連想させる動きに言葉を失っていた。ランダムフィールド・パルクールがパルクールと似たような感覚でプレイ出来るともネット上で言及されているが、ここまでの事になったとは――想定していなかったのである。
「これがビスマルクの言っていた事――」
ダークバハムートもビスマルクは知っている。実際、彼女もパルクールのプレイヤーであり、過去にはバハムートと戦った事もあった。ネット上でビスマルクがランダムフィールドに言及していた時は、他人の空似とも考えていたが――。
5分位モニターの画面を見ていたダークバハムートに対し、何処かで見覚えが――と思った人物が近寄ってくる。黒をベースとしたジャケットを肩に掛けて袖を通さず――帽子も深くかぶっていた。
体格的に女性とは分かったが、ダークバハムートには誰なのかが即座には分からなかったのである。
「何処かで見覚えがありそうだけど――何処だっけ?」
彼の顔を見て誰かと思っていたのかは不明だが、近寄って来た人物はビスマルクだった。
「誰かと思えば――ビスマルクか」
「明らかに何処かで見たような口調だけど――」
「名前はネット上で見知っただけだ。他意はない」
ダークバハムートの方は若干だが口が滑ったかのように話す。一方のビスマルクは、その口調にバハムートを連想したが――。
「もしかしてバハムート本人――の訳はないか」
結局、ビスマルクは少し話をしただけでダークバハムートをひと違いと判断して、別の方角へと去っていく。彼としては――緊張していたのは言うまでもないだろう。
「どちらにしても、このパルクールには何のメッセージがあると言うのだ」
ダークバハムートは改めて思う。ランダムフィールドがパルクールのルール等に類似した箇所、アクションも似たような物が多い事――。
もしかすると、ランダムフィールドはパルクールの二次創作的な何かなのでは――とも考えていた。
しかし、パッケージ化されているようなものであれば盗作であると言及できるかもしれないが、何処をパルクールのパクリと言及できるのか?
仮に盗作だったとして、団体側が得する事はあるのか? 面倒事になるのであれば黙認する姿勢を取るだろう。
「真相は――」
ダークバハムートは――ネット炎上等を含め、今回のケースで何を訴えているのか判断が難しくなっていた。似たような事は――ナガトも考えているだろうが。
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