第2部

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 2月3日、時期が時期なので周囲のコンビニやスーパーも節分関係の商品が並んでいる。しかし、オケアノス内にあるスーパーやコンビニでは恵方巻が売っていない。その代わりに売っていたのはカップラーメンだ。


 カップラーメンと言っても、ラベルがオケアノス特製ではない。普通にエリア外のコンビニ等でも売っている物と全く同じである。


【あの系列店コンビニ、恵方巻なかったな】


【食品ロス的な意味ではなくて、違う理由らしい。撤退とも一説には言われているが】


【じゃあ、どういう理由だ?】


【オケアノスだ。オケアノスのエリアでコンビニを出すにあたって、厳しい条件をクリアする必要性があるらしい】


【それが食品ロス?】


【そう言う説があると言うレベルなだけだろう。弁当の入荷数等も該当店舗では少ないのも、その証拠では?】


【しかし、カップラーメンとかは置いてあったぞ】


 何故にオケアノスで購入するのか? それには別の理由があった。決して、食品ロスを懸念した、恵方巻の販売を自粛する事にした――と言う理由ではない。そう言う理由だった方がネット上では『神対応』とか言われるかもしれないが。実際、ネット上でも言及されている。


【カップラーメン?】


【安いのか?】


【そうじゃない。値段は他のコンビニと一緒だ】


【どういう事だ? ますます分からない】


【コンビニで有名なクリアファイルキャンペーンでは?】


【それでは毎日行っている理由にはならない】


 ネット上では、カップラーメンを購入するとアニメ作品のコラボクリアファイルがもらえるキャンペーンだと思っている意見もある。


 しかし、それにしては期間限定ではない部分もあり、これも違っていた。キャンペーンの予定はあったようだが、数日後だった。


 その状況で、コンビニに姿を見せたのは何時ものアロハシャツにサングラス姿のフレスヴェルクである。彼自身はコンビニでパンコーナーを見て回り、チョコホイップサンドを手に取ったのだが、それ以外にもカップラーメンをプラスチックの買い物かごに入れていた。


「ARガジェットはお持ちですか?」


 レジへ持っていた際には、男性店員から他のコンビニでは聞かれない事を聞いてきたのである。ARガジェットが電子マネー代わりに使われている話は聞いているが、コンビニでも使用できるのか?


「これでよければ――」


 店員に言われるままにフレスヴェルクは、鞄からARガジェットの端末を取り出し、それを店員に見せる。次の瞬間には、店員の指示でレジの隣に置かれている小型の機械に通すように指示された。


 その形状を見て、レーヴァテインは電子マネー専用カードを通すような機械と同じ印象を受ける。やった事も、それと全く同じだった。


「次回の買い物の際にポイントが使えるようになりますので――」


 まさかのポイントサービスだった。ARゲームは基本的に1プレイ100円か200円なので、4個購入すれば100円における1プレイは浮く。ARガジェットにチャージされるマネーは従来の電子マネーとはシステムが異なり、オケアノス内のコンビニ等では買い物に使えるが、それ以外ではARゲームにしか使えないらしい。


「ありがとうございました」


 その後は、普通に現金を支払ってフレスヴェルクはコンビニを出る。まさか電子マネーのポイントでもゲームが出来るとは。ゲーセンによってはコンビニの電子マネーが使える場所もあるが、使えない場所の方が多いかもしれない。



 同日午後1時、谷塚駅でランダムフィールド・パルクールの動画を見ていたのはビスマルクだった。アンテナショップへは向かったのだが、結局目当ての物は入手出来ずじまい。そこで、アンテナショップで情報を得てギルドまでやって来たのである。


「ギルドか」


 ここ最近、ギルドの動きが活発化している件もパルクールには無縁と思っていたが、そうとも言えない事情になってきていた。


 彼女としてはARゲームがパルクールを炎上させているとは思いたくもないのだが――あの光景を見た後では、尚更だろう。


 そして、手元のスマホでマップを検索すると――目と鼻の近くにギルドの管理している店舗を発見する。考えて見れば、ここは見覚えがあったかもしれない。


「まずは、店舗内に入って――」


 ビスマルクが店舗へ入ろうと50メートル近くまで接近した所で、フラッシュモブとあからさまに分かるモブに取り囲まれた。


 しかし、そうしたモブの忠告は大抵が芸能事務所の書いた筋書きなので、ビスマルクは聞く耳を持たない。


「――またか。このパターン何度目だろう」


 ビスマルク自身は不幸体質でもないのに、フラッシュモブや芸能事務所関係者、超有名アイドルファンに狙われやすいのか?


 しかし、彼女が「このパターン」と言った辺りで、ビスマルクは何もない空間から30センチ四方の四角い物体を呼び出し、それは複数に分離する。


 それが新型のシールドビットとフラッシュモブが気付いた頃には、既にモブの方は壊滅状態だった。怪我の方は軽傷程度に抑えてあるのは、ARフィールドの展開レベルによるものかもしれない。


「こっちとしては――あまりかかわって欲しくない物だけど」


 そして、ビスマルクはあの店内へと潜入する事になるのだが――。

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