別館
suwan
第1話
「和葉。」風の音に消えそうな小さな声で
呼びかけても彼は必ず応えてくれる。
「可憐、僕はここにいるよ。」
カナディアンロッキーに囲まれたこの地で
シャトーレイク•ルイーズを眼下にした
広大なバンフ・スプリングホテルの一室で
ミレニアムイブの年
雪降る夜に 2人は初めて結ばれた。
「可憐、ここは2人に相応しい場所だね。」
和葉は苺とシャンパンでこの夜を飾る。
ここに着いたときにから
壮大な自然の息吹の中で全ての儚さを思い
心細さに駆られる。
「和葉、わたしなんだか怖い。」ホテルの窓を眺めてそのソファーに小さく身を屈め丸くうずくまる。
「大丈夫だよ、僕のお姫様」可憐の背中から
和葉が両腕で彼女を優しく包み込む。
彼の体温に温かく包まれる。
彼の唇の感触が彼女の不安を和らげてゆく。
ルームサービスで2人向き合いながら
静まる夜の気配を堪能する。
不意に和葉に抱きかかえられる。
ベッドに押し倒される。重なる彼の重みを
心地よく感じる。
可憐に注がれ求められる唇に潤い弛緩する。
彼のする全てを受け入れ一糸惑わぬ姿で
互いに激しく絡み合う。
高まる鼓動、興奮、至福…
和葉…私の愛しい人、いつまでも褪せること
なく永遠にわたしの魂を揺さぶる人
彼の温度がわたしの体温
彼の唇がわたしの潤い
彼の感触がわたしを溶かす全て
『可憐 気分はどう?」」少し呼吸を荒げ
和葉 が髪を撫でながら問う。
「とても、ステキ。」可憐は素直に感想を言い和葉の胸に顔を埋める。
和葉は満足してで可憐を抱きすくめる。
「まだ満足させない。もっと君を奪う。」
彼はまたわたしに重なる。
「好きにして…わたしの…
この身体の全てはあなたのもの。」
「可憐、僕の雪の精。とてもとても綺麗だ」
可憐は聖女のように和葉を抱きすくめ
和葉の望みを応じ叶え歓喜の声を漏らす。
乾いた喉をシャンパンです潤す。娼婦のように淫らな格好で苺を嚙る。その口で和葉を求め彼の身体を這う。
一糸纏わぬ格好で互いを求め高まる。
絶頂の波はやがて夜の雪音にかき消されてゆく。2人重なり合ったまま夜の音を聞く。
「和葉…見て雪の世界…まるで雪の祝福を受けているみたい。」
「ああ、そうだね。」
「和葉、わたしもこの雪のように溶けて
そして散りたい。」
「可憐、散ることだけは決して許さない。」
掠れ声で言う。互いに呼吸が途切れる。
絶頂の最中でさえ、
和葉は途絶えながらも美辞麗句を
惜しまない。
「可憐、僕の愛しい人。
この雪に舞う華のように美しい。」
シンと静まり返った夜に重なり合ったまま
2人でみる雪。
静寂の後、悪戯に彼の鼻が顔をくすぐる。
「どうだった?」照れた様子で聞く。
『こんなに激しくされたの初めて。」
「可憐、僕を嫌いになった?」
首を横に振り
「好きよ、和葉にされることはなんでも好き」 可憐は両手で彼を包んだ。
火照った身体を冷やすために、少し寝入った
和葉を置いて部屋を出て外を歩いた。
目覚めて慌てた和葉はコートを持って
広いロビーを探し歩いた。湖の辺りに近い
コテージのベンチにいたわたしに駆け寄る。
彼に見つけてもらえた時、わたしはなにか
を得たと確信する。
「可憐、キミがもし僕の前から少しの間でも消えたら生きてゆけない。」
彼は真剣な面持ちで言った。
「和葉、わたしも同じよ。絶対に絶対にわたしを離さないで。」
和葉は安堵してわたしを抱きしめる。
2人で異国の冬の夜を捉え溶かしきった。
『私たちはあの時永遠を誓ったのに…』
葵 可憐は溜息をつく。
2人で生きることを誓ったカナダの教会で
私たちは奇妙な誓いをたてた。
「あなたがわたし以外の誰かを求める時、わたしはあなたの邪魔をする。」葵 可憐
「君と僕を引き離す全ての者から僕は君を守り
奪い返す。」 和葉 雫
眩いステンドグラスをの高い宙に仰ぎそう
誓い合った。
「和葉、おとぎ話ではないのよ。
貴方の心を奪うモノは誰であれ絶対に許さない。」
可憐は長い年月をかけて深い森の奥で目が覚める。その長さを知ったとき一度は和葉を諦め森の精になろうとした。
「和葉、わたしの愛しい人。
今度はわたしがあなたをさらいにゆくわ。」
葵 可憐は和葉の元へ、日本に向けて旅だった。
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