僕の半分を君に託す。
@agag_255
0-1
――主人公になりたい。
小説を読む度に、新しい作品に出会う度にそう思う。
日常ほのぼの系
ハーレム系
異世界転生系
異世界ファンタジー・バトル系
ラブコメ
その他諸々。
何か素敵な、運命が変わるほどの大きな出会いはないだろうか。
異世界への扉はないだろうか。
家族に隠された真実などはないだろうか。
俺に眠っている力はないだろうか。
(ちなみに俺はこれらを《主人公スキル》と呼んでいる。)
俺はそんな馬鹿げたことを考えながら、日々を過ごしている。
家に引きこもり、ひたすらゲームをしている日々を。
引きこもりもスキルじゃないかって思った?
俺も一時期、てか一瞬そう思ったことがあった。
でもさ。
そんなヘボいスキルじゃ物語は始まらないんだよ。
もっとレベルの高い、俺の空きコストが全て埋まるくらいのスキルじゃないと。
外を出歩いて出会いを探していた時期もあった。
出会いの為にわざわざ高校受験までした。
でもなんの出会いもなくて結局この有り様。
高校は途中から不登校。ちなみに不登校歴半年(そろそろヤバい)。
外に出る機会も全く無くなった。
親にはもう諦められている。
俺はただ自分の部屋でずっとゲームをしている日々を繰り返す。
もう半分、いや九割がた諦めていた。この人生を(なんでそんなこと思い始めたかって話はさして重要じゃないから言わない)。
それだけで充分立派なスキルじゃないかって?
ばか野郎!
俺のコストはまだ九割も残っているのだ!グハハハハ!
とにかく。
俺は主人公になりたいんだ。
人生を九割も諦めたがそれでもそこだけは諦められない。
朝目を開ければファンタジー世界が広がっている。
空から美少女が降ってくる。
家族が殺人鬼に皆殺しにされて、自分だけ生き残ってしまう。
とかとか……。
これら主人公スキルが欲しくて欲しくて仕方がない。
自分から動いてもなにも成果はなかったから、俺はこうしてゲームをしながらそれを待っていた。
こんなつまらない世界なら、死んだ方がましだ。
こんなこと思ったら、死にたくなくても死んでしまった人達に失礼だけど、やっぱりそれでも俺は主人公になりたい。幾度と無くそう思ってきた。
そして、今もそう思っている。
主人公の贅沢な不満を味わってみたい。
美少女達との同居。
異世界に転生して世界を救う。
とかとか。
俺には主人公スキル《鈍感》がないからすぐ恋愛だってしてみせる(まずモテないだろうけど)。
主人公になりたい。主人公になりたい。嗚呼、主人公になりたい。。。
あ、今キモいって思ったでしょ。
俺も同感。
でも、そう思わずにはいられないのだっ!
主人公になりたい。主人公になりたい。俺は主人公になりたい……。
みんな、それぞれの物語の主人公だ。
そんな言葉があった。
確かにそうかもしれない。
でも。
もしそうたったら、こんな物語要らない。そんなのは俺の望んでいるものじゃない。
例えみんな主人公だったとしても、望んでいた物でなければ俺は納得しない。
贅沢だろうか。あぁ、贅沢だ。
でも、それでも俺は望んでいる物語が欲しいんだ。
手に入れたい。命に変えても。
一時期、その思いが最高点に達していた頃があった。
そのときは、家族が死んでいる、というスキルが欲しくて親を殺そうとまでした。
狂っているだろうか。
狂っている。
いや、狂いそうだ。マジでヤバいよ。
誰かこのつまらない日常から連れ出してくれ。
そう心で唱えてみたりしたが、変化なんか当然ない。
空を見上げても、異世界へのゲートは愚か空中都市1つ浮かんでいない。
窓から外を見て黄昏てみても、引きこもってみても、病んでみても、なんにも起こらない。
くそつまんない。
それが、この世界だ。
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