Over the vapor trail

玉簾連雀

プロローグ:青空の軌跡

 万物には全て役割がある。


 私の役目は、『誰かの願いを叶えること』。

 たまに、「お前自身の望みは無いのか」と問われるが、そんなことは決まり きったことで、答えるまでもないことだ。


 私の願いは、『何も望まないこと』。


 私が願う限り、私の望みは叶わない。決して成立し得ない願い。存在自体が矛盾している。まるで、私の存在そのものだ。

 私の話はいい。


 それで。


「お前の願いは、本当にお前のものか」


 いや。違う。


「お前はそれでいいのか」


 万物には全て役割がある。余分なものなど無い。

 全ての存在は、己が役目を全うする権利以上に義務がある。


 無駄なものなんてない。あったとしても、それは誰かにとって無駄なだけだ。

 誰かにとって無価値なものでも、別の誰かにとっては価値がある。


 だからいいんだ。お前だって……


「救いも、赦しもないけれど。」


 私とお前は、

 確かにここであったんだ────。


 🔜

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