咲久野と水瀬に嫌われた日
咲久野と水瀬は俺の帰りを待っていた。俺はその事を知らず、扉を開ける。すると、そこには咲久野と水瀬待ち構えていた。
「どうしてこんなところにいるんだ?」
「光太の帰りを待ってたんだよ!」
「そうです!遅かったですね」
随分と待っていたみたいで、心配していたらしい。
「悪かった。少し本屋に寄ってたんだよ。そうだ、二人に話がある」
俺は、いつもの態度じゃなかったため、咲久野と水瀬は驚いていた。それだけで大事な話だって事が伝わったみたいだ。
俺は自分の部屋に戻った。それにつられ、咲久野たちも部屋にくる。早速話をするため、座らせる。
「もう俺と関わらないでくれ。正直、うんざりしてたんだよ。毎回会うたび、顔をあわせてくれないしな。所詮、あいつらと同じってことなんだよ、水瀬は」
「そんなことないよ......むしろ好きだから、顔をあわせれなかったんだよ」
最後の方は聞き取れなかった。
「咲久野だってそうだ。なんでもかんでもやってもらえると勘違いしやがって。なぁ、少しは自分で頑張ってみよう!なんて思ったことあるか?いや、あるわけないか。あったら今こうしていないもんな」
俺は、人をバカにするように笑った。ここまで言えばもう俺に関わらないだろう。
「そんな人と関わるのやめよ。私の友達をバカにするなんて許せない」
水瀬は俺を睨んできながら、俺に言ってきた。その後、落ち込んでいる咲久野をつれて部屋を後にした。
水瀬にだけは嫌われたくなかったが、無理もないだろう。あれだけ言えば嫌われるに決まっている。でも、これでいいんだ。あいつらの悪口を聞くのはくるものがあるしな。それに、俺と関わっているせいで悪く言われてるしな。
「野雫目くん、さっき水瀬っちと咲久野っちが泣きながらきたよ?なんでかわかる?」
そんな二人を心配したのか、綺羅星先輩は俺の部屋にきて、そう言った。
「......別に、なんも言ってないっすよ。というか、綺羅星先輩には関係のないことですよ」
「確かにそうかもしれない。けど、泣いてる後輩二人をほっとけないよ」
「それでもです。なんならあの二人に聞いてくださいよ」
「......わかった」
渋々部屋を後にした綺羅星先輩は、咲久野たちの所に行く。
珍しく普通だった綺羅星先輩に、少し驚いたが平常心を保つことができた。
本当は俺だって嫌われたくない。やっと話せる相手ができたというのに、また一からのスタートになる。いや、スタートはもうないだろう。だが、あいつらが幸せに学校生活を送れればそれでいいんだ。俺と関わっているせいでいじめられるのは可哀想だしな。
「一人でいることがこんなに辛いなんて思う日がくるなんてな。はは、なにがぼっちだよ。ぼっち失格だよな、俺」
先程事情を聞きに行った綺羅星先輩が戻ってきた。
「野雫目くん。君って最低だね。あんな可愛い子達の悪口を言うなんてさ」
「......」
返す言葉がなかった。確かにそれだけ酷いことを言ったんだ。そう言われることは仕方ない。
その後も綺羅星先輩はなにかを言っていたが、俺の耳には入ってこなかった。正直、今は誰にも会いたくない気分だった。
「......今は一人にさせてください。お願いします」
「......わかったよ」
綺羅星先輩は渋々部屋を後にした。俺はお腹が空いているのも忘れ、部屋の片隅で落ち込んでいた。
綺羅星先輩が去った後すぐに国見先輩がきた。国見先輩は俺の姿を見た後、なにも言わずに戻っていった。国見先輩はなにかを察しているような表情をしていたため、聞かなくてもわかったんだと解釈した。国見先輩が部屋を出た後、
「短い時間だったが、咲久野と水瀬、こんな俺と仲良くしてくれてありがとな」
誰にも聞こえないように言った。その後俺は、部屋の片隅で眠ってしまった。
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