公約は「自由」

猫野みずき

第1話 「無精」な生徒会長

「ねえ、なんかしたら」

「なんもしたくない」

 副会長の私が、生徒会長のこの男、小野原有に言う。この男は、不精も不精、なんと「会長期間中はなんにもしない」ことを公約に当選した。そんな適当な奴が選ばれることも信じられないが、幼なじみの私が副会長に指名されて、雑用その他をやらされるのは、勘弁してほしい。

「あんたね、不精過ぎよ」

「だって、なんもしないことが公約なんだもーん」

 何が「なんだもーん」だ。頭痛がしてきた。そこで、私も生徒会室で暇だったので、気になる質問をぶつけてみた。

「ねえ、なんで『なんにもしない』ことを公約にしたの」

「知りたい?」

「知りたい」

「教えない」

「あっそう」

 暇だから聞いたのであって、本当はどうでもよかったので、私は冷たく突き放した。

「……森田良子、覚えてるか」

 確か、中学の時に自殺したクラスメートだ。いじめられっ子だった。

「覚えてるよ」

「あの子はさ。俺が殺したんだよ」

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