1962年初夏(2/3)
千裕さんとは木造二階建ての新居を建てた。
プロパンガスのコンロや冷蔵庫、二槽式洗濯機を千裕さんが買うといって譲らなかった。
この人は合理主義者なので家事で楽が出来るものは率先して入れた。
二階建てにしたのは子どもが出来た時の子育てを考えての事だった。
庭は玄関よりを空けていたけど、何を見越してかこの時は分からなかった。
「空き地、もったいなくないですか?」
「いや、これはなあ。そのうち必要になるはずじゃ。その時の楽しみにしてくれんか?」
そう言って千裕さんはこの時は理由を教えてくれなかった。
6月2日土曜日、相変わらず千裕さんの天候運は良く晴れた中で結婚披露パーティーを開いた。
千裕さんは神戸の学校時代の同級生と市役所の上司を呼んでいた。
うちは市役所関係は横手さんだけで後は学校時代の親友といっていい同級生を招待した。
「別に挨拶とかしてもらうような規模でやらなくていいだろう。チセさんはどんどん呼びたい人がいたら呼べばいい」
と言われたけど別に祝ってくれる人だけでいいと思ったのでやはり多くはならなかった。
うちは伯母さんの助けを得てウェディングドレスとして動きやすい白のレースを施したロングドレスを作った。
うちはお父さんをよく知らない。
お父さんは伯父の弟で戦争で予備役の歩兵伍長として召集されて帰って来なかった。
お母さんは病気がちだった所にお父さんの死を知って体調を崩してうちが8歳の時に亡くなった。
そして伯父と伯母を父と母代わりにそれ以来一緒に暮らして来たのだった。
パーティーの日。
お客様を迎える準備を済ませると伯母に手伝ってもらいながらウェディングドレスに着替えた。
そして最後に伯母がお母さんの真珠のネックレスをうちの首につけてくれたのだった。
「チセさんのお母さん、きっと喜んでるわ」
そう伯母さんは言って微笑んでくれた。
伯父さんがどこからか借りてきたカメラを持ってきた。
「記念に三人で撮っておこうか」
こうしてうちら三人の「親子」が一枚の写真におさまった。
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