5回目:祭:マツリゴト


 堂で一人、奉納舞の動きを辿る。

 ――姫様は祖神様の血を引く唯一のお方。必ずや。

 慣れない動きに汗が散り。

「あっ」

 無様な音が響き渡った。

 ひくりと思わずしゃくり上げる。躓いた足がじくりと痛む。

「……聞こえないよぅ」

 神の声なんて。

 ――長い雨が来ますなぁ。

 聞こえるのは農奴の爺の、民草の。

 ――鳥や虫が天の具合を教えてくれます。


 こつりと扉が叩かれる。少女は顰め面を用意した。

「ご託宣を」

「長雨になりましょう。支度を」

 一度目を閉じ、大仰な仕草で立ち上がる。平伏す人々を見下ろしながら歩を進める。

 ――悟ればいい。

 人の声を聞き、世の全てを知ろう。己の全てを賭けて。

 そうして。

 ――生き抜いてやる。


 少女のマツリゴトが始まる。

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