第四章・雨色に染まる異世界生活~ARURU‘s view①~

 ポツ……ポツ……ポツ……


 雨です。


 ポツ……ポツ……ポツ……


 雨が降ってきます。


 ポツ……ポツ……ポツ……


 確かホンスさんのお住まいから見上げた夜空には美しい星々がハッキリと瞬き、雨を予感させるような雲は一反の端も見られなかったはずです。


 山の天気は変わりやすいとよく言われますが、それは切り立った山々に四方を囲まれたドナの街にも同じことが言えるのでしょう。


 ポツ……ポツポツ……ポツポツ……


 あるいは街を丸ごと飲み込んだ炎が雨雲を呼びこんだのかもしれません。

 

 天高く立ち上って大気と混じりあう黒煙。

 熱されて煙と共に持ち上がった空気。

 乾いても乾いてもまだ絞られて蒸発していく水分。

 

 大きな火事や災害に見舞われた地域ではよく天候が崩れるというまことしやかな迷信がありますが、そう聞くとなるほど、この突然の雨にも頷けるというものです。

 

 ポツ……ポツポツ……ザァァァァァァ……


 それともこの雨は、気圧だとか地形だとか気象学だとか、そういった理屈とは関係のないところが原因で降り始めたものなのか……そう考えてしまうのは、少し詩的に過ぎますでしょうか?


 焼かれた人々の嘆き。

 壊された建物たちの悲鳴。

 自由を奪われた獣たち。

 

 妄執にとりつかれ、夢半ばで絶命した一人の医師。

 愛する夫に裏切られ、それでも夫を救いたかった一人の妻。

 

 圧倒的な力の前に心の折れてしまった一人の少女。

 決して死ぬことを許されないと言った一人の殿方。

 

 ……そう、やはり思い返してみても空には雨雲なんてどこにもありませんでした。

 

 ただ、様々な想いが複雑に交錯した街には、確かに不吉な暗雲は立ち込めていたのです。


 ザァァァァァァ……ザァァァァァァ……


 様子をうかがうようにポツポツと降り始めた雨粒は本格的に雨脚を早め、傷だらけのわたくしの体を冷たく打ち据えます。

 

 戦いによって火照った体温が急激に冷えていきます。

 高らかに掲げたわたくしの意志の灯も静かにしぼんでいきます。

 

 そして。


 人や人だったもの。

 建物や建物だったもの。

 魔獣や魔獣だったもの。

 

 そんなものたちの上にも、雨は等しく降りしきります。

 

 細くて、冷たくて、どこか悲し気で。

 

 ……これはたぶん、涙雨です。

 

 どんなに悲しくてもう泣くことができない者。

 どんなに辛くてもうまく泣けない者。


 そんな行き場とやり場を失った涙の代わりに、大いなる天は雨をホロリとこぼすのです。

 

 ……どうにもさきほどから思考が詩的によっていますわね。


 ですが、どうかご容赦くださいませ。


 なにせわたくし、只今みじめにも地面に突っ伏して動けないでいる、ただのか弱い乙女なのです。

 

 ついついこんな風に、美しい表現をしてお茶を濁し、辛い現実から逃避しようとしてしまうのです。


 ……まったく……情けないですの……。

 

 「キュオオ……キュオ……ン……」

 

 だから、これは。


 「キュロ……ロ……ロ……」


 このわたくしの目の前に広がった、にわかには信じられない光景は。


 「…………」


 もしかしたらわたくしの弱った心が見せた幻覚だったりするのかもしれません。

 

 「キュオオ……キュオ……ン……」


 哀れにも地上に引きずり降ろされた伝説の存在。かつての覇王。


 「キュロ……ロ……ロ……」


 その伝説の遺伝子を引き継いだ瀕死の魔獣。火を吹くトカゲ。


 「…………」


 そして、死を覚悟したわたくしが最後に待ち望んだ殿方。愛しい人。

 

 「なん……ですの?……」


 覇王はその与えられた恥辱に耐えるかのように悶えています。

 トカゲは迫りくる自身の死を振り払うかのようにもがいています。

 愛しい人は何も言葉を発さずにただ静かに佇んでいます。

 

 ……不思議な光景です。

 

 わたくしをその存在感だけで圧倒し尽くしたドラゴン。

 実際にこの目でその神々しい姿を拝める日が来るだなんて夢にも思っておりませんでした。

 

 その子孫たるサラマンドラ。

 同じ時代を生きている以上、まるきり縁遠いというわけではありませんが、彼らが生息する、ラ・ウールとは交易のない遥か南方の国に越境でもしない限り遭遇することは叶わなかったハズです。

 

 そしてイチジ様……。

 時代だとか国境だとかいう次元の話ではなく、まさしく『次元』が違う世界の住人であるイチジ様。

 

 わたくしが≪次元接続コネクション≫を発動しなければ。

 そしてその発動に失敗して、イチジ様の勤め先の隣のゴミ箱に転移しなければ。

 そもそも、わたくしが≪次元接続コネクション≫という『魔法』に興味を持たなければ。

 そしてとある事情からそれをお父様が国家事業として実用化できるレベルに達するまで支援をしてくださらなければ……。

 

 イチジ様はこうやってこの場にはいなかったのです。

 

 ……ええ、わかっています。


 しつこく『たられば法』を繰り返していけば、大概の出来事は偶然やら運命やら奇跡やらと簡単に言い換えることができてしまいます。

 

 ……奇跡。

 なんと便利な言葉なのでしょう。

 

 説明のつかない事柄をただの一言に集約し、有無を言わせず納得させてしまう強い言葉。

 

 ……わたくし、正直、その言葉はあまり好きではありませんの。

 

 まったくの『0』を『100』に換える。

 もしくはまったくの『無』を『有』に変える。

 それが奇跡の定義だと持論をもっているわたくし。

 

 常々、世の人々は安易にこの言葉を使い過ぎていると思っていました。

 

 偶然というものは、ままあるでしょう。

 まるで目には見えずともはじめから待ち構えていたかのようにそこにある運命みたいなものだって確かに存在するでしょう。

 

 ですが、わたくしにとってそれらは単なる結果。

 

 ある人が行動を起こす、もしくは起こさない。

 何かを選び、何かを切り捨てる。

 何かがあり、何かがなかった。

 

 そういった様々な選択によってあまねく枝分かれしていく道。


 そのあまりにも細かく、無限とも言える拡がりを見せる分岐と経緯を辿ってきた末に生じた結果として、偶然とか運命とか奇跡だとかに繋がるのだと。


 わたくしはそう思っていました。


 ……いいえ、今だってその思いになんら変わりはありません。

 

 この世に『0』や『100』などという絶対なんてない……そんな詭弁を大いに振るえば理論上、どんな事柄にも可能性というものは生じます。


 限りなく『0』に近くとも、現実として絶対に起こり得ないものであっても、決して『0』には至らない。


 同じ理屈で100%確実……そんなものもないのです。


 ……ですがどうでしょう?


 本来この世界にいてはいけないハズの異世界人のイチジ様が。


 本来ここらの地域にはいないハズのサラマンドラをあり得ないような力で軽々と放り投げ。


 本来この時代にはいるハズのないドラゴンにぶつけて墜落させた。


 ……これらが一堂にかえす可能性を数値に置き換えた場合、そのあまりにもあまりにも微小な割合を『奇跡的』と呼ばずしてなんと呼ぶのでしょう?

 

 経緯?結果?……いえいえいえ。

 

 一体、どんな選択と分岐と経緯を辿った結果、こんなことが起こり得たと言うのです。


 巡り合うはずのなかった三つの存在。

 

 そんな彼ら、おのおのがそれぞれ三者三様。

 思い思いの表情と感情、立場と役割を抱いたまま同じ空間で雨に打たれています。

 

 もはやわたくしなど出る幕はありません。

 

 ただの一介の小娘に過ぎないわたくし。

 魔術の知識と歴史にある程度精通しているだけの古国の姫君なんて、この舞台においては役者不足もはなはだしいのです。

 

 「……イチジ……さま……」

 

 「…………」

 

 わたくしの声に反応してこちらに向き直るイチジ様。

 何をおっしゃるでもなく、ジッとわたくしの瞳を見返してくる黒い瞳。

 

 元々、感情の起伏が乏しいイチジ様です。

 

 生きる活力がなみなみとあふれていたり、明日への希望が燦然と輝いていたりなどは初めから期待しておりません。

 

 そんなキラキラした人、知りません。

 そんなギラギラした人、わたくしの知っているイチジ様ではありません。

 

 のぼらぁ~というか、のべらぁ~というか……。

 一見すれば活気やらやる気やら何やらを著しく欠いたダメ人間。


 ――ねえ、君、聞いてる?――


 大志もなければ野望もなく、目の前に行きすぎる現実にただ身を委ねているような受動的な生き方に甘んじる覇気のない方。


 ――別に、俺が特別なわけじゃないよ――


 どんなことがあってもその涼しい顔は崩れません。

 楽しいこと、嬉しいことがあっても微笑んではくれません。

 悲しいこと、辛いことがあっても眉一つ動かしてはくれません。

 

 たとえ、わたくしには計り知れない、どんな美しい比喩を捻りだしたとしても決してその全貌を言い表すことのできない、痛烈で熾烈な痛みを常に胸の内に秘めてもなお……。


 ――俺は絶対に死んじゃいけないんだよ、アルル――

 

 年齢に似合わず達観した落ち着き。


 ……いえ、どちらかといえば諦観といった方がより正しいどこか悟り切った佇まいで世界を見やるそのお姿ですが、決して弱々しさや敗残感を感じさせないのが不思議です。

 

 どれだけ肩肘や足腰を脱力し、柔和な物腰でお話をされても何故だかだらしないという印象は抱きません。

 

 体の中心に一本、太い芯が通っているような。

 それは巌のような、鋼のような、一振りの美しい剣のような……。

 

 ――俺が背負いたくて背負っているだけなんだ――


 そうです。


 それはまるで、わたくしがこよなく愛する詠唱魔術に内包された物語のように。

 真っ直ぐで、決してブレない強靭な刃のような意志の力。

 

 誰よりも強くて、何よりも美しくて……そしてどこまでも孤独なお方。

 

 それが、わたくしがお慕いするタチガミ・イチジ様なのです。


 「…………」

 

 ですから、これは知りません。

 

 「…………」

 

 こんな人は、イチジ様ではありません。

 

 「…………」

 

 無表情で無感情な中にも、確かに光るイチジ様の豊かな感情。

 

 わかり難いだけであって、そこにはちゃんと人並みに……いいえ、もしかするとそこらの人よりもよっぽど素敵な感受性をお持ちになられているのだと、わたくしは確信しています。

 

 「…………」


 この殿方は誰ですの?

 

 こんなにも色を失った空っぽな目をしているのは。

 そんなにも意志を欠いた空虚な眼差しでこちらを見つめるのは誰なのでしょう?。


 確かにその佇まいは抜身の刃のようです。

 それも切れ味が抜群の名刀の類。


 近づくもの、目に入るものの何もかもを無慈悲に切り刻んでしまうように鋭くて、危うくて。

 

 「…………」


 この殿方は誰ですの?

 

 わたくしの大好きな物語からは大きくそれた、その妖しげな刃はなんですの?

 これが詠唱であったなら、どんな残酷な魔術が発動されてしまうんですの?


 「……本当に……イチジ様……なんですの?」


 「…………」

 

 わたくしが思わず零した問いかけに対する応えというわけではないのでしょう。

 イチジ様は一歩、こちらに踏み出してきます。

 

 そして一歩、また一歩。


 強さを増していくばかりの雨に打たれるだけ打たれながら、ゆっくりとわたくしの方に近づいてまいります。


 サラマンドラの亡骸を蹴散らして。

 石畳に広がる血の海を踏みつけて。

 事切れた魔獣たちから立ち上る濁った虹色の魔素の霧の中をかき分けて。


 一歩、一歩近づいてまいります。

 

 「…………」

 

 イチジ様との距離が詰まっていけばいくほど、彼の体のひどい有様がより鮮明になっていきます。

 

 ホンスさんから借り受けた衣服はほつれていたり、穴があいていたり、裂けていたりとどこもかしこもボロボロです。

 

 その割に傷口らしい傷口もなく、雨にも流されないくらい大量に被った真っ赤な鮮血はイチジ様のものというよりは、おそらくはその殆どが返り血なのでしょう。

 

 ただ、両手。

 だらりと下げた他の箇所よりも一際赤く染まった両手だけはどう見ても重症です。

 

 何層にもわたって血液が塗り重なったせいでわかり辛いですが、その赤に混じってところどころ見え隠れする鈍い白。

 

 あれは間違いなく骨です。

 皮を破り、肉を裂き、外へと剥きだされたイチジ様の拳の骨です。

 

 ……痛いです。

 見ているこちらが痛くて顔をしかめたくなるレベルの痛々しさです。


 当の本人だけが、相も変わらず無表情。


 痛みはおろか、触ったものの感触でさえ感じられているのかどうかもあやしい読んで字のごとく、『無』の表情です。


 「っ!!イチジ様!!その手は!?」


 「…………」

 

 わたくしとイチジ様の距離はもう目と鼻の先。

 

 そこまで近づいたところで、わたくしは飛び出した骨などよりもよっぽど重大な問題がイチジ様の手に起こっていることに気がつきます。

 

 血の赤。

 骨の白。

 魔素の虹。

 雨の灰。

 

 そんな色の隙間を縫うようにして、キラキラと金色に輝くものがちらほらと見えます。

 

 威光を示すものでもなければ、栄華を顕(あら)わすものでもなく。

 柔らかな日差しと涼やかな風に揺れる稲穂の絨毯のような優しい金。

 

 誰かを陥れたり、傷つけたりするわけでもなく。

 ただ纏った人間を守るためだけの穏やかな金。

 

 ……魔力です。

 

 わたくしが、毎夜イチジ様に施してきた魔力のコーティングの金色です。

 

 毎日の生活で黙っていても剥がれたり綻んでしまったりがあるのは重々承知しております。

 充分な設備や本格的な儀式ができない現状、どうしたって付け焼刃なところは否めません。

 

 ……それでも用心に用心を重ね、十分なだけの魔力を纏わせたはずです。

 

 たとえば無手のまま魔獣に立ち向かうとか。

 たとえば体力の限界を超えてもまだ死と隣り合わせの戦いを行うとか。

 

 そう、そんな無茶さえしなければ、十二分に……。

 

 「…………」

 

 イチジ様が立ち止まります。

 とうとうわたくしのところまで、イチジ様は辿り着いたのです。

 

 地面にうつ伏せで倒れたままのわたくし。

 そんなわたくしを静かに見下ろすイチジ様。

 

 魔力のコーティングがホロホロと剥がれ落ちていく様子に目を見開くわたくし。

 そんなわたくしの目を何も宿らない虚ろな瞳で見つめ返すイチジ様。


 「…………(ス……)」


 「……イチジ……さ……っ!!」


 ドクン


 心臓が一つ、強く鳴ります。


 ようやく愛しい殿方と触れ合える距離まで近づいた胸の高鳴り?

 降りしきる雨の冷たさが内臓にまで届いた?


 ……いいえ、違います。

 

 イチジ様がその傷だらけの手をスッとこちらに伸ばしてきた瞬間、わたくしの全身を駆け巡ったのは、紛れもなく恐怖。

 

 生物として当然備わった、自分の命の危険を察知する本能を逆なでするような圧倒的な怖れに、わたくしの心臓が跳ね上がったのです。

 

 「……そ……んな……」


 「…………」

 

 そんなことが、あっていいのでしょうか?

 

 この方はイチジ様。

 

 わたくしが死を覚悟した際に、お父様やお兄様、世話になった人や数少ない親しい友人を差し置いて、心から会いたいと願った想い人。

 

 その差し出された手に、どれだけ救われたことでしょう。

 あまり多くない口数を補うように、なんと感情豊かな手の平だったでしょう。

 

 その手に触れられたい。

 その手で頭を撫でられたい。

 その手を握りたい。

 

 ここのところ、そんなことばかりを考えていました。

 

 「…………」

 

 どんなに血で赤く汚れていても。

 どれだけ傷だらけになっていても。

 

 その手を伸ばされたのなら、わたくしは嬉しさのあまりにだらしなくもデレデレとしてしまうハズなのです。

 

 「……っつ!!」

 

 ですので。

 

 イチジ様の大きな手がこちらに迫ってくるのに、思い切り目を閉じてしまった自分の目蓋が信じられません。

 

 こんなことはあり得ません。

 あっていいわけがありません。

 

 きっとイチジ様は、頑張ったなって……。

 こんなに薄汚れていても美少女だって……。

 頭を優しくポンポンしてくれるために手を伸ばしただけなのです。

 

 そしてわたくしは力尽きて。

 後のことを何もかも託して。

 イチジ様の厚い胸に抱かれながら意識を飛ばして。

 次に目を覚ました時には、何もかもが解決していて。

 『今度はお返しに俺が膝を貸してあげた』とか言われて。

 『ぴゃ~ぴゃ~』とわたくしが騒いで……。

 

 そんなご都合主義の、脈略も伏線も度外視にした無理矢理なハッピーエンドが待ち受けているに違いないのです。


 「…………」


 ……なのにどうして恐怖を感じてしまったのでしょう?


 一瞬よりもまだ刹那。

 ほんのわずかなものだとしても、どうして『殺される』と思ってしまったのでしょう?


 その冷たい手で絞殺される。

 その赤く染まった手で殴り殺される。

 

 そのわたくしを救ってくれたものと同じ大きな手で、今度はわたくしを破壊してしまうと考えてしまったのでしょう?

 

 ……ああ、そうですわ。

 ……うん、そうです。そうなんですわ。


 ちょっとわたくし疲れているんですの。

 ほら、雨にだって打たれていますし、きっと風邪でも引いてしまったのでしょう。


 体調がすぐれない時は、何かとネガティブな方向へ思考が流れがちになるものです。


 気の迷いにして気の病。


 身の危険を感じたことも。

 イチジ様がいつものイチジ様に見えなかったことも。


 何もかにもが勘違いですわ。


 ……だから、ほら、わたくし。


 きちんと目を見開くのです。

 目を開けて、愛しい殿方のご尊顔をちゃんと拝むのです。


 きっとそこには。

 ええ、きっとそこには。


            キュオオオオオオオオンンンンンンン!!!!


 いつかのようにイチジ様が、あの表情の無い中にもどこか微笑んでくれているような雰囲気のある優しい顔をしてくれているはずですの。


 「……よぉ……久しぶりだな」


 そして勇気を出して目を開けたわたくしの眼前には。


 久しぶりに耳にしたイチジ様の声色で、一度も聞いたことがないような冷たい台詞を吐き。


 もはやわたくしのことなど目にも入らない遠くを見据え。


 雰囲気などではなくハッキリと明確に頬の筋肉を吊り上げて酷薄に笑う。





             誰かがいました。

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