ちょっと振り返ってみた 2

 それはタカヒロと連絡先の交換をする前のことで、私がバイトを始めて半年が経った辺りから訪れた。

 制服に着替えて出勤すると誰しもがキッチンスタッフに 「おはようございます、◯◯(名字)です。本日も一日よろしくお願いします。」 と挨拶あいさつをしてから手を洗浄するという習わしがあるのだけれど、タカヒロが先に出勤をしているときに私が途中から出勤して挨拶をすると、










 タカヒロ 「おぅ、おはよ!

 ミノ、おはようのキスは?(^O^) 」




 と私の前に立ちはだかり毎度茶化してきた。

 私はそれをはねけ 「うるさーい!www 」とか 「はいはい、分かった分かった(照) 」と言い放ち、さっさと手を洗いキッチンを出ていくのだった。

 この時の私はすでにタカヒロに胸を撃ち抜かれていたので、そのやり取りが本当に恥ずかしくて顔を見られないでいた。

 アサコとタカヒロがこの時期に付き合っていたのかは分からないし、キッチンスタッフであるアサコの前でさらされていたのかまでは記憶にないのだけれど、他のスタッフがいる前でまんまと見せ物にされていた。

 今思えば私がタカヒロを好きなことはこの時の態度で皆にバレバレだったわけで、そしてこのことがアサコに伝わっていたとしたら私をイジリたくなるのも無理はない。






 そして別日のこと、私がタバコを始めた後もからかってくれるふしが見受けられた。

 それは互いにラストまで仕事をした日のこと、くつろぎタイムになっていたときに私も皆の近くで一緒にタバコを吸っていた。

 丁度そのときにタカヒロのタバコが切れていて










 タカヒロ 「ミノ悪い、タバコちょうだい。」




 と言ってきたから











 実乃果 「うん、いいよー(^ ^) 」




 とタカヒロにタバコの箱を渡そうとすると、私の吸い掛けのタバコを手から取り上げ、2口ばかり吸ってそれを返してきた。



 なにーーぃ!そっちかい!

 タカヒロ自ら間接キスをしてきただとぉ!?

 んで、ここここ、このタバコを私にどうしろと言うのだぁ!!? Σ(・ω・;)

 まだ半分くらい吸える長さだし私が残りを吸ってもいいのですかぁ!!

 つーかこれは遠回しに【俺様の下僕になるための儀式】なのかぁ!? ww

 えぇ、王子が望むのならば、下僕としてワタクシの命の一つや二つ喜んで差し上げますともぉぉぉ!!

 つーか記念のコレを持ち帰って神棚に奉納ほうのうしたいですぅ!!

 と、浮かれていたのだけれどおもてには出せるわけもなく、気丈に振る舞いながらも震える手でそのタバコを吸い切った。

 もちろん持ち帰れるはずもない吸いがら名残なごり惜しみながら灰皿に捨てた。





 ……。


 ……………。


 てめぇ!こんなやり取りだけでよくイケメン・タカヒロに告白をしてオーケーをもらえるだなんて思ったな!て皆さま怒らんでくだされぇ。

 勘違いの大バカ野郎と重々承知しておりますとも。

 タカヒロにこれらのことを話したら 「ん?そんなことがあったのか?」 と言われてしまいそうだけれど、それでもワタクシメには十分オーケーがもらえる材料になり得ると思っちゃったんです。

 私の全細胞たちが 『いけ!いけ!GO!GO!』 とお祭り騒ぎだったのだからどうしようもなかったんですよぉぉwww

 こんなアホに掛かれば小さな出来事も大きな希望に変換される。

(こういう時だけ) 全くいい意味で前向きなワタクシメだった。

 イケメン・タカヒロからしたら興味がない存在にせよ、太陽の周りをせっせかと回っていればいつかはちゃんと気がついてくれるだろうと思いながら、今日も小さく小さ〜く健在している実乃果だった。





 ✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼





 自分の存在価値を分かった上で、

 ⚫︎清く

 ⚫︎いさぎよく

 ⚫︎ライトに (重くならないように)

 の三ヶ条をかがげタカヒロにメールを送ると決めた。




 そして

 ⚫︎絶対に迷惑を掛けない。

 ⚫︎煙たがれてはいけない。

 ⚫︎聞き分けのいい子でいなければならない。

 を念頭に、改めて身の振る舞いも誓った。

 もちろん、こちらからはお誘いメールなんていう烏滸おこがましい物も送らないと決めた。

 私にとってイケメン・タカヒロはそれだけ絶対的なものだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る