純愛とキモさの狭間で。3

 いきなりだけれども私にはこのバイトを始める前から付き合っている男性がいることを今更ながらに暴露しておかなければならない。

 今『え!?』と思いました?

『ちゃんと彼氏がいるのにタカヒロタカヒロ言うんじゃねぇ!(怒) 』て思いました?w

 私からしたらタカヒロはアイドルみたいな存在であり見ているだけで十分癒されるし、会えるだけでらりほっほ~♪だし、でもタカヒロは高嶺の花的な地位を確立しているので私はそれをヨダレを垂らしながら物陰から見ているだけのタダの変態なファンなんです★

 なのでそこはどうかご理解くださいませ○┓ペコリ



 話は戻って、私はこの付き合っている彼氏にDVを受けていた。

 あれは忘れもしない19歳の9月からのことだった。

 思い切りの顔面パンチから始まり、逃げられないように激しくミゾオチに拳を突き上げられたり、針金ハンガーで傍目はためからは見えない所をムチのように叩かれたりしていた。

 彼氏に歯向かったら倍返しにされるからそれもできずに私は泣きながら許しをうだけだった。

 それでも私は人や物には当たらず、ましてやリストカットもやらずにただひたすら我慢をしていたのだけれど、DVがエスカレートしていく内に私の気が触れて泣きながら半笑いを浮かべるくらいまで追い詰められた。

 私はゴールが見えないこの闇を誰にも相談できず、彼氏から逃げる手立ても改善策も分からないまま1年間が過ぎ、そして『バイトは生活のためにも、俺の不祥事を明るみにしないためにも平然を装って行け!』と彼氏に言われるがまま仕事に駆り出された。

 彼氏から解放されるその時が私の心休まる時であり、またイケメン・タカヒロがいるこのバイトに行く事こそが生きる励みとなった。

 なのでタカヒロへの想いも日を追うごとに自然と色濃くなっていった。





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 タカヒロの彼女がアサコであると知ってからというもの『私もイケメン・タカヒロに認めてもらえるほどの何か取り柄はないだろうか。』と模索する日々がつづいた。

 そんなある日のバイト明けのこと、イケメン・タカヒロがバイト先の女の子に「 火ぃ貸して。 」と言ってタバコに火を点ける姿が目に入った。

 勿論その子も愛煙家であり、タカヒロと楽しそうに雑談をしながら一緒になってタバコを吸っていた。

 その子の吸い方がまた色っぽくてすごく大人に見えたし、そしてそれがやけにタカヒロと画になっていて羨ましく思った。







『……そうだ。

 私もタバコを始めよう!』







 DVから少しでも気が紛れる物を求めて、そしてタカヒロと一緒の嗜好品を求め、尚且なおかつあんな“色気”が出るのなら自分にも自信がつくかもしれない。

 あんな風にタカヒロのそばで堂々と笑いながら話せるかもしれない。

 タバコを始めたからと言ってイケメン・タカヒロとお近づきになれる保証はないのだけれど何でもいいから切っ掛けがほしかった。



 だーかーらー、迷わず始めさせてもらいます。

 大人の階段のぼっちゃうぜーぃ♪

(毎度ながら単純ですみません★)



 20歳と7ヶ月を迎えた実乃果は愛煙家の道を踏み出した。

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