純愛とキモさの狭間で。1

 私の名前は実乃果みのか

 化粧も知らない繁華街もさほど行かない、性格も見た目も派手ではない私はどちらかと言えば内向的な女子だ。

 いや、家族や友達の前だと元気で明るい性格で通っているから正確には内弁慶というべきだろう。

 私は高校を卒業して専門学校に通っているのだけど『とりあえず高収入のバイトをしたい!』と思い立ち、地元で見つけた居酒屋のバイトを始めた。

 バイト仲間からはヘマばかり繰り返すわ、作業は遅いわでダメダメな人間だと思われているはず。

 ヘマはさておき、作業が遅いのは真面目で手が抜けない性分だからなんだけどさw

 私はそのバイト先で一人の男性の先輩と出逢った。





 彼の名前はタカヒロ。





 タカヒロは学年で言ったら私の2つ上なのだけれども年齢的には丸々3つ上の大学生だ。

 タカヒロも勿論学生だからバイトとして仕事をしている。

 クールな性格のタカヒロは自分のカラーを知っているせいか出勤時のファッションもクールに決まっていた。

 例を挙げるとデニムパンツにカジュアルジャケットを羽織り、それに合わせて革靴を履いたりと、周囲の男性とは比べ物にならないくらいにセンスが良かった。

 そして煙草もたしなむタカヒロは私からしたらすごく大人な男性に見えた。

 ちなみにタカヒロはイケメンと呼ぶに相応ふさわしい程にそれはそれは整った顔立ちで、今で言うところの桜井翔と亀梨和也を足して2で割って全体的にスラッとさせた感じだ。



 しかし私の中のイケメン像と言ったらあまり良い物ではなかった。

 いつでもどこでも素を出さずに決め込み、それでいて華やかで眩しすぎて近寄れないからだ。

 平々凡々な性格に普通すぎる顔立ちに加え、美的センスも幼稚な私がそんなイケメンさんに関わろうなんざ烏滸おこがましくも思い、気がつけば自然と遠ざけてしまっていた。

 勿論こんな私をイケメンさん自らが時間や労力を使ってまで相手にするはずもなかった。

 けれどもタカヒロは今までのイケメンさんのイメージとは少し掛け離れていた。



 彼の勤務態度は超ストイックで笑わないし、むしろ次から次へとくるオーダーの処理にイライラしていて怖くて近づけやしない。

 オーダーも一段落したと思いきや業務用食器洗い機へ向かい、ガンガン!と物凄い開閉音を立てながら「さっさと洗いやがれ!」と言わんばかりに食器をドカドカ!と押し込んでいく姿はまさに鬼そのものだ。

 けれども一度バイトを上がると仲間との雑談で満面の笑みをこぼしたりするのだ。

 あの冷血でクールなイケメン・タカヒロが顔をクシャクシャにしながら笑うのだ。



 うきゃぁぁああああ!

 この生き物はなんぞや!?

 怒ったり笑ったりと素丸出しやないですか!!



 そんな可愛い一面を見せつけられた私はドギューーーン!!とあっさり胸を撃ち抜かれちゃいました。

 いわゆるギャップに惚れてしまったのだwww

 そして『何だか分からんけれどこの得体の知れないイケメンさんに関わってみたい!』と直感的に思えた。

 ちなみにこの笑顔はタカヒロとバイトが被る度に見ることが出来てしまうのでこちら側としては相当心臓に悪いwww

 私はタカヒロの笑顔を盗み見ては勝手に一人で萌え萌えモンモンしながら過ごしていた。(´ Д`;)ハァハァ

ホントに気持ち悪くてすみません★





 そんなある日のバイト明けのこと、『タカヒロの笑顔も見られたことだし今日もさっさと帰ろう』と更衣室に向かおうとしたタイミングで「今から皆で飲みに行こう」という話が持ち上がった。

 輪の中にはイケメン・タカヒロもいた。







『タカヒロも飲みに行くんだぁ…。』







 あまり皆に馴染めていなかった私は『きっと私は誘われないんだろうなぁ。まぁ私を呼んだところで話の肥やしにもならないしね…。』と思いながらワイワイやっている皆をよそに一人遠間かで目も合わせずに聞いていた。

 と言うより帰るタイミングを逃してしまったので動こうにも動けないでいた。

 そんな私の空気を察知したのか、とある一人の仲間が声を掛けてきた。








「お前も来いよ。」







 私を誘ってくれたのは紛れもなくあのイケメン・タカヒロだった。



 なぜこんな私を誘ってくれるの!?

 ていうかタカヒロとも挨拶を交わす程度で特に何の接点もないのにホントに私なんかが行ってもいいのですかぁ??



 皆の輪にちゃんと溶け込めるのかも不安だったけれど、しかしそこは恋する乙女の気持ちがまさったワタクシメ。



 イケメンなタカヒロは私を見捨てなかったーーー!www

 いやっほっほーい♪ヽ(@´ ∀ `*)ノ

 ワタクシメ是非ともお供させてもらいますともぉぉぉ!

 と勝手に心の中で舞い上がりチャッカリ付いて行くことにした。

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