断絶物語
雪猫なえ
no step「途絶えた物語」
「オベリア……」
「……ファイ」
俺とオベリアはただただ立ち
「これは……一体何なんだ……」
「
オベリアはそう言った。そして俺は後ろを振り向く。
そこには、いつもの見慣れた日常があった。
咲き誇る花々、澄んだ青い空、
みんなに無性に会いたくなった。今、俺の胸中にあるのは大きく渦巻いた不安だけ、目の前には、闇、振り返れば、日常、そんな異常な光景が、俺の胸をざわざわと
「博士が消えてしまったんだわ……」
オベリアが突然膝をつく。
「もう戻ってこないかもしれない……!」
見えないの、彼女はそう言って崩れるように座り込んでしまった。彼女の黒髪が、跳ねる。俺はオベリアの手元から落下した水晶を受け止める。幼い頃から扱ってきたオベリアの水晶にも、もう慣れた。扱い方や動きにも慣れ始めて、対処だって出来るようになってきた。だから、俺とオベリアは二人で旅路に着いても大丈夫だと思った。そんな矢先だった。
「やっと始まると思ったのに……」
絞るように、俺は
「どうして、今なんだよ」
終わったんだ。俺とオベリアの物語は、終わった。
いや、途切れたんだ。始まってもいなかった。だって、俺とオベリアは、生まれてから、本当は一年と経っていないんだから。
思い描いた人たちも、見慣れたと語った風景たちも、全て。生まれて、俺とオベリアの脳に焼き付けられたもの。そういう「設定」たち。俺たちに、それほど馴染んでいるはずがないものにも関わらず、俺が身近に感じることが出来るのは、そういうことなんだろう。
オベリアは、博識の持ち主だった。そして、先程から、目覚めたようだった。この物語の「外」に対する認識が。
俺たちが、「登場人物」でしかなかったということに。
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