花畑


わたしは自分がいつからここにいるのか

覚えていないし

ただ気が付いたら

ここに立っていた

記憶の始まりは

この場所だった

花が咲き乱れて

でも会話は出来なかった

わたしはたった一人でここにいた

寂しいという感情にも気付かずに

これ以外なんて

何処にも無かったから

ああそうなのかと

無表情で頷く他なかった

時折、強い風が辺り一面に吹いて

無慈悲に綺麗な色の花びらを散らせた

そこに誰かの意思が隠されているのか

わたしにはわからないけれど

細い腕で顔を覆って

呼吸が出来なくなるほどむせ返るような甘い香りに包まれて

本当の事なんて

きっと何処にも用意されていなくて

ただ誰かのいたずらのようなことが

繰り返されているだけなのだろう

そして最後まで

意味なんて何もわからないまま

さよならするしかないのだろうね

もしもきみがこの世界で何かを間違えて

死にたくなることがあるならば

そんな必要はさ

これっぽっちも無いとわたしが断言しよう

死は

ただの通過点に過ぎない

わたしたちは同じ流れの中にとどまることが出来ない

確かなことは今この瞬間だけ

このわけのわからなさに埋没しているということだけ

あとは全てやけにはっきりとした夢が

全人類が巻き込まれた夢が

現実と名乗ってそこにいるだけ

いつか目が覚めるのだろうか?

あの空のずっと向こうに居座っている

酷く悪趣味な存在が

それを許すとは思えないのだけれど


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