存在しない

最初から存在しない

だから涙を流すのは間違っている

そこには何も無い

本当はあったのかもしれないが証言が無い

それを見つめたという証言が

誰もその存在を確認していない

だからそれは「そこにある」ではなかった

本当に哀しいことは

哀しいということに誰も気付かないということだ

最初から存在しない

真っ暗な部屋の中で

扉が設計されていないようなもの

けれどその中には生きている

誰も知らない存在が息づいている

抹殺すれされない

始めから存在しないものが

そこで生きている

これは架空の物語ではない

今現在の話しである

現在進行形で視界に存在しないものが存在している

素通りされて気付かれないでいる

雑踏の中

行き交う人々の群れに立ち尽くし

ぼんやりと不思議そうに眺めている

けして認識されることはない

死ぬまで電柱のような扱い

存在しない

そして存在しないまま、死ぬ

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