渇いた砂漠

渇いた砂漠を歩いていた

理由は忘れた

喉が焼けるように熱かった

他には何も考えられなかった

それでもたまには正気を取り戻して

このわたしって誰だったっけ?

などと大切な問いを思い出す

すぐに忘却の彼方に消え去ったけれど

自分………

思い出せないな

見渡す限り殺風景な単色の世界が広がっていた

一体ここで何がしたかったのか?

ぼろぼろに擦り切れてしまった靴を交互に動かした

頭はずっとぼんやりしていた

足りないものが多すぎるのだろう

まだ辿り着くべき場所が用意されているのか?

あれから一体どれぐらいの時間が過ぎ去った?

同じような場所をぐるぐるとただ歩き回っただけ?

昨日と同じ様な今日が繰り返されただけ?

永遠にここから抜け出すことは出来ないのか?

疑問に与えられる答えは無かった

表情は既に死んでいた

かつてはその瞳に輝きもあったようだが

いつの間にか消えてしまっていた

明確な境界線など何処にも用意されていないのだ

気付いた時にわたしは終わっていた

いつか………

そういつか

その言葉にそそのかされて

また一歩を踏み出してしまうのだろう

当初の目的は失われ

記憶をなぞるようにただ足を動かすだけ

脳に突き刺さった記憶を

全て抹消することが出来たなら

風がそよぎ

湖のきらめきが陽の光を反射して

小鳥たちは無邪気に戯れ

新緑が生命力を露わにし生い茂っている

そのような幻にも似た光景を

全て焼き尽くすことが出来たなら

わたしはようやく最初の一歩を踏み出すことが出来るというのに

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