叫び

叫び声がする

誰もいない部屋の中で

(一体、誰が叫んでいるのだろう?)

わたしは疑問に思う

ここには自分以外、誰もいない筈なのに

首を傾げる

聞き覚えのある声がする

追い詰められ

死ぬ寸前のような絶叫を発している

もしかしたら

刃物を持った存在にでも襲われているのかもしれない

どうしてそんなことをわたしは思うのだろう?

よくわからない

けれどなんとなくそんな気がした

叫び声がする

その人間はそろそろ死ぬのだ

そしてそれは自殺ではなく

他殺なのだ

そこまでは感じ取ることが出来た

見渡す限り真っ白な部屋

何も無かった

千切れたぬいぐるみの断片だけが微かに転がっていて確認、出来た

床と壁だった

天井は高すぎて見えなかった

叫び声がした

絶叫はいよいよ理性を失って

本格的に次の段階へ向かっていた

狂い始めていた

わたしが耳を塞いでもその声は途絶えることはなかった

ふと思った

叫んでいるのはわたしなのではないだろうか?

何かおかしいと思ったら涙を流していた

これは自分か?

わたしの血塗れの指先は痺れていた

まあいい

多少のことは譲歩しよう

世界の仕組みが理解不能でも

夢か現実かわからない

かつて知っていたその確かめ方を思い出そうとしているのだが

どうしても思い出すことが出来ない

あんなにわかったふりをすることが上手だったのに

今ここに棒立ちしているものに名前を付けてくれ

わたしは誰だったか?

そして背後に佇んでいる気配は何だ?

さっきまで展開されていたあの世界の景色は何だったのだ?

幻?

夢から覚めた?

何かがおかしい

だがその順番がわからない

叫び声が聞こえる

今度ははっきりと

叫んでいるのはわたしだ

瞳をくり抜いても視界に映る存在に怯えながら

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