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 菜の花と言えばやっぱりおひたしだけど、個人的には辛し和えとか好きだな。

「斉藤君は何の菜の花料理が好き?」

「そうですねぇ」

 着替えに行ったバックルームから声が響く。

「やっぱり天ぷらとか好きですね」

「天ぷらか、いいね」

 サクサクの衣とあの独特の苦みが良いだよね。子供のころは嫌いだったのに、大人になると好きになっているんだよなぁ。ビールにすごく合う。

「あと、ニンニクで炒めてあるのとか美味しいですよ」

「何それ、めっちゃビールと合いそう」

「最高に合います」

 よし、この頂いた菜の花はニンニクで炒めることにしよう、そうしよう。

 んーそれでもちょっと多いかな? ミケにおすそ分けするのも・・・それなら。

「せっかくだし、この菜の花メニューに出そうか」

「え、これをですか!?」

 そんなに驚かなくても。リュックを落としたのかバックルームが一瞬賑やかになった。

「良いじゃない。旬のおつまみって結構みんな好きだと思うよ。菜の花は大人の味だし」

「でも、うちの菜の花なんかで良いんですかね?」

「なんで?」

「だって本当の農家さんの奴じゃなくて、趣味で作ってるやつだし」

 斉藤君は恐縮しているようだ。そんなこと、全然ないのに。

「農家だとか趣味だとか、そんなの関係ないよ。この菜の花を見たらわかる。お母さんやお婆さんが愛情を込めて育てたのがね。俺はそれが凄く嬉しかったし、みんなにもおすそ分けしたいって思ったわけ。斉藤君のお家の菜の花は凄いんですよって」

 斉藤君は恥ずかしそうにきゅっと肩を上げて笑った。

「美味しいって言ってくれますかね?」

「大丈夫、元々美味しいんだから。それを俺たちがどうやってもっと美味しくするか、だね。何か案ある?」

「バーに合う、菜の花のおつまみ、ですか」

 開店までまだ時間はある。愛情の詰まった菜の花で最高のおつまみを考えよう。

 食べた人が少し幸せになれるような、そんなものを。

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