0520


おれは美術館に務めているのだが

そこで雑用係のようなことをしているのだが

今日はまた一つ難題を依頼された

椅子の汚れ落としをしてほしいというのだ

築二十年、一度も交換したことのない椅子だ

おれは思った

(………経年劣化だろ)

新しいの買えよ

だが思っていることをそのまま口にすると顧客になんだこいつ? と思われ

直接の上司からお前なんなの?

と言われてしまうので仕方なくやるふりをする

ふりだ

実際にはこんなもん落ちやしない

見ればわかる

おれは今、文章で伝えようとしているからいまいちピンとこないかもしれないが

そうだな

最初は白いものが

カレーヌードルの中に三年半、浸けた

とでも言えば少しはわかってもらえるかもしれない

それを元の白い状態に戻せと言うのだ

(そもそも、これって白かったのか?)

おれはまじまじとその椅子を見た

おれが始めてこの美術館に来たときから黄ばんでいた椅子だ

だが相手が白いのだと言うのだからそうなのだろう

白かったのだ

おれは美術館の営業が終わって閉館後その椅子を作業場に持ち帰って次亜塩素酸ナトリウムをぶっ掛けてみた

容器になんか希釈しろとか注意書きが書いてあったような気がしたがよく読まなかった

だって薄めたやつよりもそのままの方が効果は絶大だろう

雑巾でごしごしした

ふう

疲れた

そして新品のカレーヌードルが誕生した

黄ばみがより艶を増し、その存在感を主張し始めたのだった

………今日はもう寝よう

明日は草むしりだ


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