0422


読者がいない

それは知っている

どうして知っているのかというと

そういう設定が予め用意されているのだ

『何人が見ました』

そう知らせてくれるのだ

便利な機能だな

そう思った

まったく有り難いではないか

さて………

ではわたしの魂の詩は何人が閲覧しているのかな?

ぽちっと押す

表示されるまでの微かなドキドキ

0人

0人が見ていますと冷酷に告げる

それは見ていると言えるのだろうか?

未だかつて聞いたことが無い

そんな見ているは哀しすぎる

がっかりだよ

最悪だな角川書店

こんな運営会社、豆腐の角に頭ぶつけて死ねばいい、角だけに

などということは思っていても口走らない

大人だからね

心は子供だけど

「見た目は大人、心は子供っ」

名探偵になって殺人事件でも解いてやろうか、ああ?

読者がいない

だからとても静かだった

住宅環境としては良いのかもしれない

ここで余生を送るのも悪くないな

そう自分の本当の感情を誤魔化した

そのような術ばかりがうまくなってしまった

「読者をよこせ」

それがわたしの本音だ

いないなら北朝鮮みたいに小舟を停泊させてどっかから掻っ攫って来い

こっちはな

つまらない現実世界から逃避したくって創作をしてるんだよ

現実世界では誰からも必要とされず常にいてもいなくてもどっちでも良い存在

いや、寧ろいない方がすっきり

そのような烙印を押されている

その鬱屈を晴らすために、わざわざ仮想空間に乗り込んで、アカウントを作成して、創作をしているのだ

それが『誰も見ていません』では哀しすぎるだろう

わたしはここにいる

いるぞ

確実にいる

だがその叫びは誰にも届いていない

つまりそういうことか?

そもそも最初からここに人がいるということに皆、気付いていないのだ

(一体、わたしは何をやっているのか?)

花が咲いて散る

人生のことをそんな風に例える奴もいる

なるほどな

だが花が咲いたことを誰も知らなかったらそれは本当に花が咲いていたことになるのだろうか?

誰も見ていない場所で花が咲いて散る

そういったものの存在意義を誰か教えてくれ


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