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「そうかい? 私はとても可愛いと思うけれどね」
「男が可愛くてどうするのよ」
「いいじゃないか。物事は多面的に見た方が楽しいよ」
「日本男児が聞いて泣くわよ」
別に・・・泣かないし。そりゃまぁ可愛いよりは格好いいとか素敵とか言われたいけど、可愛いだって褒め言葉なわけだし。いいじゃん、男がロマンチストでも。
「ほらほら、志麻、何を拗ねているんだい」
「拗ねてなんかないわよ、パパ」
「分かった。神様からの贈り物で志麻の事を言わなかったからだね。違うんだ志麻、もちろんパパの子供として生まれて来てくれたこと、神様からの特別な贈り物だと思っているよ。もちろん、ママに出会えてこともね」
パチン、と愛娘にウインクを飛ばすパパ君。
「そんなの、当たり前でしょ、パパ。私だってパパとママの子供に生まれたこと、神様からの特別な贈り物だって思っているもの」
「そうかいそうかい、パパは嬉しいよ」
「もう、泣かないでったら」
おいおい、俺は今何を見せられているんだ。なにこの家族劇場。
でもまぁ、年頃の娘に素直にそんなこと言われたら、父親としては嬉しいよなぁ。自分の子供に生まれたことを喜んでくれるなんて、それ自体がとても特別な贈り物だ。
「嬉しいですね、常盤さん」
「うんうん、本当に志麻は私の娘には勿体ない子だよ」
いやいや、明らかに常盤さんの血が入っているからこそ、こんなに親子でラブラブなのでは?
「そうだ志麻ちゃん、何か飲みたいものはある?」
「え、飲みたいもの?」
「お返し、だよ」
常盤さんが満面の笑みで手洗いに立ちあがった隙に訊いた。今日は三月十五日。バレンタインにチョコをくれた人に、お返しとして一杯カクテルを作ることにしている。志麻からもチョコを貰った。
「あぁ、それ」
「もちろんノンアルコールだけど」
「・・・あなたのオススメにして」
パパが居なくなった途端、急にクールになるタイプ。年頃だからかもしれないけど。
「かしこまりました」
さて、何にしようか。なんか可愛いカクテルに「えっと」
「ん?」
考える為に俯いていた顔を上げる。志麻は視線を斜め下に下げたまま言った。
「あなたに出会えたことも、その・・・神様からの特別な贈り物だと思っているから」
「・・・そっか、ありがとう」
答えると同時に常盤さんが戻ってきた。志麻は何もなかったように常盤さんに笑顔を見せる。
さて、返事はあれで良かっただろうか、なんて。答えなんて分からないけれど。
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