冒険編

序章 時空の狭間

第1話 異世界?

 どこだここは。暗い闇の中に光の粒が漂っている。宇宙空間のような、何とも不思議な景色だ… こんなところは知らない。僕はこんな世界に飛んだ覚えは無いぞ。かなり戸惑いつつも、ただただ前に進む。ずっと宇宙のような景色が続き、進んでいるのか不安になるくらいには何もない世界だ。何だここは。


 冷静に状況を整理しよう。腕に付けている電子コンパスが狂っているため、まず僕が元からいた世界では無さそうだ。とすると、異世界にワープしたという事になる。僕の世界から別世界に移るには、普通はワールドストーンというアイテムが必要だ。強大な魔力で空間をねじ曲げれば可能だが、そんな事ができる奴はいない。多分。


 なら…なぜワープしたんだ。ますます分からなくなってくる。

 昨日は、一日中家でダラダラしていて… 買い物ついでに家によって来たアテネと少し喋った。ということで、昨日は特に何もしていない。 …いや、そういえばアテネとこんな事を話したか…


「ねえルーザー、最近何してるの?ほら、学校卒業してから何かやってるっけ。」

「その事なら大丈夫だ」

「バイトでも始めたの?」

「…特に何も」

「いやダメじゃん!ニート生活はマズいって… そもそも、一人暮らしで無職って生きてい

 けないじゃん!学校行ってる間は補助金貰ってたから大丈夫だったけど」

「まあ、せっかく兵士学校で戦闘技術学んだからそれを活かせる事したいとは思ってる」

「武器好きだから武器集める冒険にでも出るの?それもお金が必要だよ」

「異世界で冒険でもできたらいいかもな。まあ、じっくり考えとくよ」

「確かに異世界行ってみたいかも!じゃーねー」


 まあ、少し異世界について触れただけだ。金がないのに異世界で冒険なんて無謀だからできないし、そもそもワールドストーンが手に入らない。それでも、何となく異世界行きたいな、と思いながら寝た。という事は、これは夢…?夢というには少し違和感がある。よく、夢の中でそれが夢と分かるという人がいるけど、僕はその経験が全くない。夢の中でこれは夢か?なんて考えた事が無いから、何となくこれは夢ではないと思ってしまう。そんなことはどうでもいいんだ。実際これはなんなんだ?


 考え込みながら永遠と続く床を歩いて行くと、何となく気配がして来た。歩くスピードを上げてみると、気配はどんどん強くなってくる… これは間違いなく、恐ろしく強い人がいる。これ程の気配の圧を感じる事は滅多にないため、だんだん気が引き締まってくるのが分かる。実際結構緊張している。 因みに、この気配を読み取るのは僕の特殊能力だ。


 できるだけ物音を立てないよう歩き続けていくと、やはり一人の人間がいた。

 かなりの長身で、足元まである長い黒もマントを付けている。目は鎧で隠されている。そして、闇のオーラを放つ巨大な薙刀を軽々と持っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る