第36話「ダキア攻略戦(前編)」
「悪魔が先に出てくるか、それともエルフが先に出てくるかで戦術が決まる」
「悪魔が先なら?」
「その時はお前さん」
ベオはそう言いながら、アウローラのその細い肩をポンと叩く。
「リィターンの出番だよ」
「
「どちらにしろ、悪魔は出てくるんだ」
アイ・ワークス早期警戒機、エイトヘヴンによる管制を任されたベオ王子は、真剣な顔つきでダキアの地、人間たちの勢力の中心地へとその視線を注ぐ。
「ここからでも、アイワークスで解る」
「
「このピトス、俺の特殊能力と相性が良いみたいだな」
「特殊能力?」
「ああ、いやいや……」
たまに相手の心が読める、それを聞かれて気味悪がれてはたまらない。弟の二の舞だ。
「エルフ機が相手ならば、たとえ新鋭機でも、戦いは程々にな」
「ミーミルングが相手でも?」
「ああそうだ、お前は対悪魔の切り札だ」
「
「それならば、たとえ悪魔がアンチマジックを張っても貫通できる」
「まあ、パゥアーも量産されているんだ」
「肩肘を張る必要がない?」
「まあな、アウローラ」
そう言ったきり、ベオは近くに鎮座している自機「エイトヘヴン」の調整にと、タラップにその脚を伸ばした。
――――――
「ねえ、リコリス」
「何よ、アウローラ」
ベオ王子の近侍、メイドであるリコリスに軽い酒を持ってきながら、ハーフエルフにしてリィターン・パイロットであるアウローラは気軽に語りかける。
「私もエイトヘヴンの調整、ベオ様の手伝いに忙しいの」
「そのベオさんの好物って、何」
「何、よ……!!」
ギリィ……
メイド・リコリスの可愛らしい眉が、その言葉を聞いてギリィとつり上がった。
「あなた、ベオ様に気があるの?」
「そうなわけじゃなくて、そうなわけじゃなくて、ただ!!」
「百年早いわ、ベオ様にプレゼントだなんて」
「だから、違うって!!」
そのまま機嫌を損ねたらしいリコリスは、エイトヘヴンの中にと潜り込み。
「ねえ、ベオ様……」
アウローラへの「あてこすり」にあえて甘い声を出し、エイトヘヴンの整備を手伝う。
「参ったなあ……」
彼女アウローラにしてみれば、本当に単にベオとコミュニケーションを図りたかっただけなのだ。
「お友達欲しいけど、どうしてもリコリスとは上手くいかないなあ……」
同じエルフ嫌いな事もあり、仲良くなれそうな下地がありそうなのになかなか良い友達になれないことに、アウローラは軽くため息を吐き。
「リィターンの整備でも手伝いに行くか……」
そのまま、自機の調整へとその歩を進めた。
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