宝石商(雄)と用心棒(雄)のまぁ、なんていうか、その・・・あれだ!

@noia1230

第1話

俺、ミゲル。21歳。


この国ではフォード家って言ったら名の知れた豪商、の三男。


まあ厳しい質実剛健な家に生まれちゃって。


商いも武器やら、証券手形やらの面白みのないものばかり。


王族や貴族御用達の古臭い暖簾抱えてるから、兄ちゃん達も堅物で。


親父の言う通りに学校行って、嫁もらって、ガキ作って。


まったく安定しすぎた人生を山もなく谷もなく歩いてるって感じ。


俺はといえば、少し年が離れて爆誕したから、

そりゃあもう嫌になるほど干渉されて。


しかも、母親に似て美人になもんだから、兄ちゃんたち以上に

厳しく制限された幼少期だった。


小さいころから洋服だって好きに選べず。


社交ダンスから剣術まで、分刻みのスケジュール。


2歳から字を覚えさせられ、算術から契約の交わし方の

商法戦術をきっちり学んだ。


同年代の子供と遊びにも行けず、ずっと家庭教師が付きっきりで。


しかも、その家庭教師がいたずらしないか見張るための召使までいて。


まあ、どこに出ても恥ずかしくない程度のマナーと、

詰め込まれた商業知識には感謝してる。


だけど。それと引き換えのストレスフルな生活だった。


だから、グレた。


わざと派手な恰好で出歩き、豪勢に遊んだ。


12になる頃には、よく面倒を見てくれたお姉さんに筆おろししてもらって。


13からは寄宿学校だったけど、実家よりぜんぜん監視が緩くて抜け出したい放題。


馬を走らせて隣町の女子校に入り浸っていたのはいい思い出。


着飾るのも嫌いじゃないし、惚れた晴れたの駆け引きも面白く、

商売の勉強にもなった。


悪友も出来たし、家から出た俺は充実した学生ライフを存分に楽しんでいた。


それも高等科の二回生の時までだったけど。


兄の友人の弟が同じ学年にいて、そいつがご丁寧に俺の素行を実家にチクった。


クソ真面目な兄のクソ真面目な友人の弟はさらにクソ真面目だった。


「前から気に入らなかったんだ!君は!

 その、だらしなくはだけた胸元のっ!痕っ!見せつけてるつもりかい?!

 全くもって不愉快だっ!この甘ったるい匂いといい、破廉恥極まりない!」


処女かよ。あ。童貞かよ、か。


今のご時世、15の淑女でも破廉恥なんて言葉使わないぜ。


だからあいつはもてなかったんだろうな。俺を逆恨みするなってんだ。


それから実家に連れ戻された俺は、18になるまで親父の後について

商売を手伝だわされて。


でも、素行の悪さは今更治らず、親父としょっちゅう衝突していた。


貴族の集まりで親父が旦那連中に商品を売っている間、

奥方達を総当たり戦で相手してたらさ。


その様子を見ちゃった女中が、空気を読まずに広間で大絶叫。


心底呆れた親父に、「金輪際お前を息子とは思わん!」と簡単に勘当された。


着の身着のまま家を追い出されたが、幸い親父について回った間の

給金が貰えて助かった。


「最低限の餞別だ。」と投げてよこされた手形は

家が一つ買えるほどの額だった。

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