18.ハードな休日


いつものベランダ。

僕らはあれから簡単に事情を説明して、わりとあっさり帰してもらった。被害者が来てくれて本当に助かった。春の蹴りに関しても少し怒られるくらいで済んだ。本当によかった。

僕らはスーパーで買った餃子と唐揚げを食べながら焼酎を飲んでいた。


「春?」

「ん?」

「やっぱり元気ないね。どうしたの?」

「いや…ごめんね。なんか巻き込んで。」


春はあの後から極端に元気がなくなっていた。僕が訳を聞いても「ごめんね」しか返ってこないので、参っていた。


「もういいってば。痴漢を撃退したんだよ?凄いことだと思うよ。」

「うん…。」


いつもの春じゃないな、と思った。心配になった。


「春…何かあったの?」

「いや…。」

「明らかに元気ないじゃん。春らしくないよ。」

「私らしいってなに?」

「いつも元気じゃん。」

「こんな日もあるよ。」

春の機嫌が悪くなっているのを感じる。春は両脚を抱えて椅子に座りながらタバコをふかし空を見ている。

「なんだっけ…あ、the black bassザ・ブラックバスだっけ?あれ見せてよ。」

「あー…。」




「ごめん、今日部屋戻るね。今日ありがと。ホントごめんね。」



春は部屋にそう言い残して戻って行った。

瞬く間に無に包まれる。そんな感覚がした。

僕はまたしても取り残されてしまった。


痴漢騒ぎから春の様子がおかしくなったのは明らかだった。春があんなに怒って、しかも手を出すなんて思ってもみなかった。あんなにアクロバティックな蹴りができることも驚いたが。


何かある。気になる。

僕はどうしても知りたくなった。何故かはわからないが、知りたくなった。


春のことを。



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