02.アブノーマルな隣人

部屋の鍵を閉める際、ふと左が気になった。


脚だった。


いや、足首だった。

左の部屋のドアが少しだけ開いており、その隙間に紺色のスニーカーを履いた足首が挟まれている。

5秒ほど遠巻きに見つめるも動く気配はなく、さすがに心配になって近づいてみた。

倒れているのだろうか。そもそも痛くないのだろうか。

恐る恐る少しだけドアを開け、声をかけてみる。


「あの…大丈夫ですか…?」


返事はない。


「大丈夫ですか?」

もう一度声をかけながらドアを開け、中を確認する。


そこには乱雑に散らかった衣類やゴミ(?)に埋もれてうつ伏せの状態で倒れる女性の姿があった。

意識がないのか返事はなく、流石に焦りを感じた。

「大丈夫ですか!」

彼女の身体を起こし、肩を揺すりながら声をかけた。


「う………ううう」

微かにうめき声が聞こえる。意識はあるようだ。

「大丈夫ですか!?救急車呼びますか?」

「ちょっ、ちょっ、待って待って、痛い痛い…頭痛い。」

「あ、頭ですか?…うっ。」

意識が戻り意外と話せることに一瞬戸惑ったが、この女性、ひどく酒臭い。

「いててててて…水ないかな?水、いてて…」

二日酔いだろうか。おそらく飲みすぎて帰ってきたはいいものの、玄関で力尽きたのだろう。

「水ー…うっ…」

「ちょ、ちょっと待ってくださいね。水持ってくるんで部屋上がります。」

ただの酔っ払いと言えどもこのまま放置してはおけないので、上がらせてもらうことにした。


だが、廊下は足の踏み場もない程脱ぎ散らかされた衣類やゴミで埋まり、キッチンまでの道のりは遥か険しいものとなっていた。

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