明るいあの娘の育成計画______美少女はオタクになりたい
ハンズ
第1話 始まり(何がとは言っていない)
カチカチッカチカチカチッ
ボタンを押す音だけが部屋に響く。
俺は視覚と指先に全神経を集中させていた。
俺はコントローラを握りしめてゲームに集中する。
今プレイしているのは巷で噂のFPS(一人称視点)ゲームだ。
「裏から1人...味方に前線任せるか...」
俺は独り言を呟く。こういうゲームをやっていると独り言も増えてくる。
画面右端を見る。自分チームと相手チームの得点が表示されている。
74対74
あと1キルした方の勝ち。頭の中で確認しながらも神経は全て画面に注ぐ。
「...いた」
俺は熟れた動きで照準を合わせる。
バババババッ
敵のダウンを確認。
画面には勝利の文字だけが映し出されていた
「今何時だ...」
時計を見る。時計の短針は4時を指していた。勿論だが午前の。
俺はそのままベッドに倒れ込み、気を失うように眠った。
世の中には2種類の人間がいる。
搾取する側とされる側?
夢を叶える者と叶わない者?
モテるかモテないか?
違う...いや、最後の例はやっぱ無しで。
陰キャラか陽キャラかだ。
至極簡単だろう?
別にどちらが良いかとか勝っているかとかは興味がないが。
俺は好きで人とはあまり話さないし、アニメは日本のポップカルチャーとして愛している。つまり陰キャラである。
逆にアニメを侮辱するやつ、またはリア充、共に抱き合い爆発しろ。
...おっと、本音が。
ちなみに今は登校途中。
一人で歩いていると下らないこと考えちゃうよね。考えちゃわない?
俺以外にもチラホラ登校途中の生徒が歩いていた。中には男女で一緒に。〇ね。
俺が通っている学校はまあまあ学力のある高校だ。
名前は原賀濱高校。原っぱなのか浜辺なのかハッキリしろといつも思う。
クラスは普通クラスと特進クラスに分かれており、俺は普通クラスだ。まあ勉強は普通程度なので当然だが。まあ成績は良くも悪くもない。平均の少し上を獲る程度。
「おーい、淀木氏〜」
後ろから名前が呼ばれた。オタク口調で。
名前が呼ばれたので、最後に自己紹介。
俺の名前は淀木幸也(よどぎゆきや)。
普通にオタクな高校2年生。
********************
「昨日のラブガル見たかい?淀木氏」
「昨日はドイツ兵として戦場で戦ってた」
「リアタイ視聴は基本じゃないか!録画で観ようなんて怠慢の極みだよ!」
この、俺の苗字に氏を付け、いかにもオタクっぽいのは俺の知り合い。
てかリアタイ厨怖っ
名前は鷹山国男とゆう。
別に友達ではないが話題が一致するため会話を交わす。
言わばオタク仲間というやつだ。オタク仲間と友達は一緒じゃないから。ここ重要。
「じゃ、僕はこっちだから」
いや、それ女の子との帰り道でのセリフだろ...と思いつつ
「ああ」
と短く返事をし、教室に入る。既に始業10分前とゆうこともあり、人が沢山いる。
そう人。クラスメートじゃない。クラスメートは画面の中にいるから間に合っている。
俺は誰とも話すことなく、また話しかけることもなく自分の席につく。
隣の席には既に人が座っていた。
色を抜いた明るい茶髪に整った顔立ち。
そして豊かな胸を持っている。...別に見てないし。視界にちょっと入っただけだし。
俺がこの学校で最も嫌いな存在。
陽キャラ中の陽キャラ。
絵に書いたような美少女。
家はきっと大金持ち(偏見)
閑崎世羅(かんざきせいら)が座っていた。
...ちなみにこいつの名前一発で読めたんだぜ?すごいだろ?普通セラって読むよな?
...流石に今の自慢は見苦しいな。すまん。
授業中も閑崎は隣にいる。まあ隣の席だから仕方ないが。しかし、隣だからといって話すかといえばこれといってない。お互いに前だけを向いている。
まだ後ろの席の人の方が、プリントを後ろに回す時にサラッと
「あ、1枚足りないかも」
「じゃあ貰ってくるね」
と会話する。つまり隣の席の人というのは近くて遠い存在なのだ。
俺が閑崎をチラ見する。すると閑崎と目が合った。
こうゆう時って焦るよね。
俺は慌てて顔を前に向ける。
少し顔が火照てる。
目が合った時の顔が可愛かったとか別にそんなことはない。そんなことないんだからねっ
誰得のツンデレなんだろう。需要はない。
********************
授業が終わり放課後。青春に勤しむリア充共は部活に向かおうとしている。俺も帰ってFPSするかな...と思ったその時。
「淀木君」
名前を呼ばれた。
あれ?氏がついてないし声が高いし可愛い。こんなオタク仲間いたっけ?そんなことを思いながら声のした方向を向く。
そこには明るい茶髪に整った顔立ち。
そして豊かな胸を...(2回目なので割愛)
そこには閑崎世羅がいた。
ここはビシッと用件を聞こう。
「にゃ...何か用?」
噛んだ。そりゃ無理だよ、俺閑崎と話すの初めてだもん。陰キャは緊張するんだよ。
閑崎は少し躊躇ってから口を開き、
「ちょっと話したいことがあるんだけど」
と、それだけ言った。
その瞬間、俺は飛び上がり大気圏を突破できる衝撃に見舞われた。
そのまま地球の衛星になって悠久の時を過ごしたい。ほら〇ーズみたいにさ。
廊下に上靴が擦れる音が響く。
俺は閑崎の後ろを金魚の糞よりもっと距離をとってついて行った。
落ち着け...平然を装え。大丈夫だギャルゲーで選択肢ミスったこと、あんまり無いから。
てか俺、こいつの事嫌いじゃん。可愛いし人気あるし友達多いし。つまり陽キャだし。
別に嫉妬じゃないからな!俺は陰キャでいいし!
頭の中ではそんなことを思いつつ、後を追いかける。てかどこに向かってんだ?
着いたのは多目的教室。鍵はかかってなく、閑崎は躊躇いもなく中に入る。俺も中に入り一応ドアを閉めておく。別に変な期待とかないから。いや本当に。嫁に誓って。
「急に呼び出してごめんね?」
閑崎の第一声は謝罪だった。まあ印象は悪くないな、てか誰目線だよ俺。
「いや、別にやることないし...それで、話したいことって?」
俺は単刀直入に聞く。我ながら凄い度胸だ。いつものミジンコハートじゃない。
閑崎は少し恥じらいのような素振りを見せる。
お、これはワンチャンあるのでは...?俺もいよいよリア充か...?陰キャ卒業か...?そして童...(自粛)
俺は心の中で歓喜の舞を踊る。
閑崎が口を開く。
「私を...」
私...を?をって何?
「オタクにしてください!」
知ってた。なんて言わないでね絶対。
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