黄昏の館 第一章
プル・メープル
プロローグ
太陽が地平線に沈みゆく夕焼けの刻。
1人の少女が森の中を歩いていた。
「あれ?こっちだと思ったんだけどな……」
おばあちゃん家からの帰り道、遅くなってしまったと近道の森の道を歩んだのだが、どうやらどこかで道を間違えてしまったらしい。
「うぅ……と、トイレ……」
歩き回っているせいで足は疲れ、尿意も限界を迎えている。
「あ、あそこは……」
木々の間からあかりが垣間見える。
自然と入らせてもらおうという考えに至る。
「お、大きい……」
近くまで来てみると思ったより大きな家で入るのに気が引ける。だが、体は限界を訴え、やむなく扉に近づく。
インターホンはなく、扉に付いた金具を扉に打ち付けて音を出すタイプだ。
ゴンゴンゴン
扉を叩いてしばらく待つ。だが、聞こえるのは木々のざわめきだけだ。
「いないのかな?」
少女は扉を軽く押してみる。
「あ、空いてる…………」
扉は思ったよりも軽く、あっさりと開く。
家の中は広間のように広く、赤い絨毯が敷いてある。
「誰かいませんか?」
返事はなく、少女の声は壁に染み込んで消えていく。
正面には階段があり、2階と吹き抜けになっている。その上には広間を囲むように伸びた通路がある。
1階にも右と左に部屋が続き、階段の脇にも扉が見える。
ガタッ
「な、なに!?」
今の音、2階から聞こえた気がする。
少女は恐る恐る2階に上がる。
2階にも奥に伸びる通路といくつかの扉が見える。そのうちの一つが微かに開いていた。
「…………」
開いた扉を軽く押す。
ひとりでに開くかのように扉はスムーズに開き、真っ暗な部屋の中を見渡せる。
窓が空いているのだろうか。カーテンがひらひらと揺らめき、時折、オレンジ色の光が部屋の中を這う。
「誰もいない……」
少女は部屋の中で一つだけ、光るものを見つける。
「鏡?」
少女は鏡を覗きながら鏡の中の自分と
暗くてよく見えないがなにか違和感を感じる。
その時、風が強く吹いたのだろうか。
カーテンが大きく揺れ、差し込んだ光が鏡を照らし出す。
「え!?」
そこに映るのは少女の姿ではなかった。
それは見知らぬ女の子……。
次の瞬間、後頭部に鈍い衝撃が加わり、少女は意識を失った。
プロローグEND
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