第2話

その一言で顧問は自らの過ちに気がついた。



「そうだな・・・何を聞いているんだ俺は。すまない。忘れてくれ。」





写真が何を伝えたいかは、見た人それぞれの受け取り方次第。





それを撮影者の一存で、メッセージを決めつけてしまうことは







写真を見た人々の思考を奪ってしまうことにほかならない。







写真は自由であるべきなのだ








彼の父親の口癖だった。







知ってか知らずか、生徒に教えられるとは。


自分もまだまだ勉強不足だな、と感慨にふけっていた。







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何をふざけたことを言ってるの?

と言わんばかりに顧問を睨みつけた。





あなたの父親はあなたに何も教えなかったの?

あんなに偉大な父親がいながら、写真に興味が無いだなんて嘘っぱちじゃない。






それでいて、あんなにデリカシーのない質問をするのね。








逢海あみは憤りを隠せず、静かに、強く言い放つ。


「先生、それ、本気でおっしゃってますか?」



すると顧問はやっと自身の過ちに気がついたようだった。



写真は自由。



彼女の思想は、彼の父親と同様であった。


というよりは、彼の父親をリスペクトしていた。




それだけに、息子であるはずの彼が言い放った一言は



深く、深く彼女を憤らせた。











周りの部員たちは、伝記モノの戦闘直前のような


一触即発の雰囲気を楽しむかのように


静かに逢海あみと顧問のやり取りを眺めている。




「じゃあ、そろそろコンクールに出展する写真を決めよっか。」


部長が空気に耐えかねたのか、話題を切り出す。



「私、コレ出したいんだよね~」


「私この写真好き~」



生徒の声とは裏腹に、顧問が写真を選別し黒板に貼り付けていく。



「今回コレを出そうと思う」



顧問が選んだ写真には、逢海あみが撮影した写真は含まれていなかった。








まあ、そうだろう。

所詮この写真の意味を聞いてくる人にはわからないのだ。


などと考えていた。


「島野。ちょっといいか」



帰り際、逢海あみは顧問に呼び止められる。



「あの写真なんだが」



ほら来た。結局聞きた・・・



「コンクールに出さないか?」



ん?


「え?先生はコンクール用の写真には提案されていませんでしたが・・・」



「ああ、言葉が足らなかったな。すまない。」






「一般の写真展に応募してみないか?」

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