008: 2018/03/03 『花より団子』

「花より団子、というより」

 そうは姉妹と花火のおやつの風景をぼんやりとながめる。一方の流海はマイペースに梅の花を眺めている。

 そして団子でもなく、カフェオレにショコラケーキ。仮にもここは神社の家なのだけれど、と自由人な父とのんきな母親のことを思う。

 お酒は花火や結には早い。そもそも昼間から神社のしきで飲んだくれてしまったら、ゆうでさえも『えにしさま』からおとがめを受けないだろうか。父はそっとつぶれた優樹を回収してしまうだろうけれど、と創は声には出さずとも考えてしまう。

「まあ、お酒を用意しないだけ、ましか」

 ふと流海の表情を眺めて、その視線の先にある梅の花を見つめる。学問の神様としてまつられているふじわらのみちざねも、けいにされた際に、自宅に残した梅の花に思いを寄せ、一首に書いたと聞く。

 もし流刑が無かったら、天神様は何を思ったのだろうか。いや、天神様もいたのだろうか。

 えにしさまは、どこからやってきたのだろうか。今何をもたらして、未来はどうなるのだろうか。桜の季節に、何かを見せてくれるのだろうか。

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