007: 2018/02/10 『あと五分』/左利き

そう、そろそろ終わった?」

「……あと五分」

真の手伝いで、意を決して筆を持ったものの、左利きの創には文章を書くのが非常に苦労となる。

えんぴつを持ってノートに書くのも一苦労で、大体手をよごしてしまい、めんどうくさがりながら手を洗う。

筆は水分が多い。かわくまでに手を付けようものなら、たちまちに今まで書いた文章が台無しになる。

それに気をつけている時に限って、失敗してしまう。

れきしよでよくあるあの現象だ。

現に、ちょうど長い住所を書いていたところで手がすべってしまった。

「……あー」

真もとがめはしないが、手伝おうか、と声をける。手伝いをらいした本人が。

しかし創は、こうなると意地でも交代しない。

かんべんしてくれ、と自らの手に言いたい創であったが、書いたのは自分自身だ。

夜中の作業でつかれているのに、それでも続ける創。

とんでもなく不器用でがんなのだ。

長引きそうだ、と判断した真は、おもにあるバリスタのスイッチをしにいった。

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