003: 2017/10/21 『一杯どうですか/紅葉』

「コーヒー、一杯どう?」

「え、あ、じゃあブラックで」

「砂糖1さじお願いします。……意外ですね、神社でコーヒー出されるのって」

神社のしきないにある家の縁側に招き入れられたれんはくは、招き入れた森宮家の母・百合ゆりの言葉に目を丸くした。

神社と聞いておもかべる飲み物というと、はつもうであまざけとお祝い事や清めのお酒だろうか。

「そう? 意外かもしれないけど、はコーヒー派が多いのよ。結も最近カフェラテにしたの」

「へえ」

琥珀からかんたんのため息が出る。

その色も、やや白みがかってきた季節。

上を見上げると、紅葉が神社の景色をいろどっていた。

あかに近いもの、だいだい色のもの、黄色くなったもの。

彩りは空から、やがて地面へと移っていく。

空に残るのは、少しくすんだ水色。

「だいぶ風も強くなりましたよね」

「ええ」

「日も落ちるのも早くなりましたもんね」

「『秋の日はつるべ落とし』とも言うわね」

コーヒーが冷めるのも早い。

少しこわばりながら、まだ熱いコーヒーをすすった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る