1+2=rin

カゲトモ

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「つーかまー」

「ひ」

 咄嗟に出てしまいそうになる言葉を必死に飲みこんだ。

「えたぁー☆」

 途端にぎゅっと身体を締め付けられる。腕ごと抱えられて身動きが取れない。こんなにほそっこい腕なのに、どんだけ力強いんだよ。

「っ」

 回されたスーツの袖から覗く時計に見覚えしかない。てか見なくても分かっていた。こんなことする奴、一人しか思い浮かばない。

「はなっせ」

「やーん」

 やーんじゃねぇ! 百歩譲って抱き付いてくるのは許そう。いつものことだし、言ったって聞かないし。でも締め付けるのはやめてくれ。俺が落ちるのを期待しているのか? 恋には落ちねぇけど、下手したら意識が落ちるぞ?

「放しても怒らない?」

 放しても怒る自信しかないけど?

「まぁそうちゃんが怒ったところで全然怖くないんだけどね?」

 じゃぁさっさと放せよ!!

「うっせぇ。俺だってリンなんか少しも怖くねぇよ」

 解放されて締め付けられていた腕を撫でながら振り返る。そこにいたのは腰に手を当てこちらを見上げるイケメンの姿。

「あ? ベッドで相手してやんよ?」

 ・・・目がマジなんだよ。やめろよ。それが一番こえぇよ。

「つか何の用なの。これから仕事あんだけど」

 だからお前の相手している暇ないの。

「なんでいんの?」

「酷いなぁ。友達の店に飲みに来たのにそんな言いかたするんだぁ」

「いや仕事は?」

 お前もオーナーだろうが。

「部下が有能なもんで」

 そりゃ、上が遊び回ってりゃ自然と下が育つんだろうが。

「てかなんで今日その格好なの?」

 目の前の悪友は細身のスリーピースのスーツ姿だ。反対色の派手なポケットチーフまで挿してある。長い髪は後ろで一つ結びにしてあるのに、怖いくらいスーツが似合うんだから、なんかずるい。こいつ、凄くずるい。

「え? 惚れ直しちゃった?」

「惚れた覚えなんてこれっぽっちもありませんけど?」

「またまたぁ。いつも言ってんでしょ、そうちゃんならいつでも良いよって」

「ばーーか。ほら入るんならさっさと入れよ」

 ご近所さんに勘違いされるだろ。

「おじゃまー。ごめんねー開店前なのに」

「白々しい」

 全くコイツってやつは本当に色々自由で困る。思考とか身体とか。

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