ウェポンギア

@NIAzRON

第1話バトンタッチ

「はあ…はあ…はあ」


どこまで続いてるのか分からない暗い道をただ、走っていた。

どこに行けば良いのか、この道であってるのか、そんな事も分からずただひたすらに真っ直ぐ走っていた。



タンタンタンタン


自分の走る音が反響する。

どうやらトンネルみたいな所を走っているのだと理解する。



「はあ…はあ…」


もうどのぐらい走っているのだろう。

何分?何時間?それとも秒??時間の感覚も分からないままただひたすらに走る。

自分が何で走ってるのかも分からない。


周りを見渡すも

まるで世界に取り残されたように自分しか


どくん


急に恐怖にかられる。

ここは薄暗いトンネルの様な場所なのだが、街灯も無ければ虫とか鳥とかの生き物も居ない。


本当に自分だけが、取り残されたのか…?



「だっ、誰か!誰か居ませんか!?」


怖くなり声を荒げる。


「誰か居たら!返事をしてください!!」


でも何も反応は無い。


なんで?本当に僕は1人なの??

ふと、後ろを振り返る。

後ろには、ただ闇しかなかった。



「誰かっ!!誰か居ませんか!!!」



恐怖のあまり更に声を荒げる。

気を抜けば涙が出そうな程、自分は恐怖を感じていた。


それでも僕は、ひたすら走った。


何で走ってるのか?

どこに向かってるのか?

それは分からないけど、何故か止まるのが嫌だった。



「お願いします!…どなたか居ましたら返事をしてください!!」


だが、僕の声は虚しく響き渡るだけだった。



なんで誰も反応してくれない?

本当に僕しか居ないのか?

いや、きっと声が小さいんだ…僕の声が届いていないんだ。

そう思い{すー}と息を吸い



「誰か居ませんか!!!?居たら返事をしてください!!!」

自分の出せる思いっきりの大声を出した。


それでも辺りは{しーん}と静まり返っていた。

こんなに声を荒げても誰も返事をしない…もう僕以外の人は誰も居ない…??

そう諦め掛けていた時だった。



「珍しいな。こんな所に人が


その声は男の人の声だった。

しかも前方からそう遠くない場所だ。


「ど、どこに居ますか?」


「君の前方にいるよ。」



その言葉を頼りに僕は更に進んだ。

誰でも良い…人が居る!それが僕の足を軽くしていた。

そして―――



「やあ、初めましてだね?」


――僕は人と出会えた。



薄暗い中でも顔が見えた。

さっきは男の人と思ったけど……女??


「はぁ…はぁ…」

僕はその場で膝に手を付け息を整えていた。


「そんなに急いでどうしたんだ?」

そう、質問をされる。


{はぁ…はぁ…}と息を整え

「んっ……分かりません。気付いたらひたすら走ってました」

と答えた。



女?の人は{ん〜}と顎に手をつけ考え始めた。

…に、しても綺麗な人だなぁ。

声は男と思ったけど、ハスキーボイスってきっとこう言う事なんだと思う。


「な、なんだよ?俺の顔に何か付いてるか?」



あまりにも{じー}っと見るもんだから注意されてしまった。

あれ?でも今俺って…??


「あの…失礼な事聞いて良いですか?」


「ん?」


「じょ、女性ですよね…??」



「は?はぁぁ??俺は男だよ!」



「えっ!?あ、えと、、す、すいません!」


女性だと思ってた人は{はぁ…}とため息をつき

「まあ、幼馴染にも女だって思われてたし別に良いけどよぉー」

と不満そうに呟く



怒らせた…??

すぐにそう思い

「あの、本当にすいません」

と頭を下げる。


「い、いや!やめてくれ!別に怒ってないよ!!」


そう慌てながら言ってくれる所をみると悪い人ではないみたいだ。

なので、僕は頭を上げる。



「あ、そう言えば何かの縁だ。自己紹介しないか?」


「そ、そうですね!」


「俺の名前は霞憐かすみれん。君は?」


「僕は雀蜂黒兎すずめばちくろと、真っ黒に兎と書いてくろとって読むんで、同級生なんかには、うさぎちゃんって呼ばれてます…」


「うさぎちゃんかぁ…。俺もそう呼んで良い?」


「あ、はい!か、霞さんの好きなように呼んでください!」


「じゃあ俺も憐で良いよ。見た所学生かな?」


「じゃ、じゃあ憐さんで…。はい!15歳です…」


「うはぁ〜若いなぁ…でも若いからこそここに居るのが気の毒だな…」



そ、そうだ!ここはどこなのか聞かないと…。

ん?でも気の毒ってどう言う事だ…?

疑問に思いながらも僕は先ず状況整理を優先した。


「あの、憐さん…ここどこなんですか?」



憐さんは顎に手をつけまた考え始めた。

{ん〜}と言いながら顔を険しくしていた。



「ここは本来人が通る事は無いんだけど……多分俺が過去改変の為に時空を歪ませてもらったからその時にここに紛れ込んだんだと思う」



へ?過去改変??時空を歪ませた??い、いったい何を言ってるんだ??


そんな僕を見て

「あぁ、ごめん。分からないよね。」

と謝る憐さん


「つ、つまりどう言う事ですか…??」

僕は再度質問をする。


「そうだなぁ」

と、困りながら何かを考えてる風の憐さんは

「うさぎちゃんが向かうべき場所は教えてあげれるよ」

そう言って{ニコッ}と微笑んでくれた。


か、可愛い…と思いつつも僕は

「ど、どこに行けば良いんでしょう?」

と、質問をしていた。



「アッチだな」

憐さんは、指を差しそう言った。


「まっすぐ行けば良いんですか?」


「あぁ、まっすぐ行くと光が見えてくるはずさ」


「でわ一緒に行きましょう!憐さんも向かってるんですよね?」


「いや…俺はアッチなんだ…」

憐さんは先程差した場所とは違う場所を指差して言った。



てっきり僕は同じ場所を向かっているんだと思ってただけに疑問だった。


「アッチは何かあるんですか?」


「まあ、な」


憐さんは、それ以上語る事もなく口を噤んだ。

な、何か不味い事聞いちゃったかな??と僕は内心{ぞわぞわ}していた。


そんな僕を気遣ったのか、憐さんはゆっくりと語り出した。



「俺の望むハッピーエンドを掴みに行くんだよ」


「ハッピーエンド…ですか?」


「あぁ…これが最後の俺の旅さ」


憐さんの瞳は強く輝いていた。

僕には分からないけど、きっと大事な事をしようとしてるんだ。

だから僕は深く追求はしなかった。



「あ、そうだ!」

何かを思い出したように唐突に声を出した憐さん


「どうしました?」


「多分うさぎちゃんはに向かってると思うんだ」


「始まり…ですか?」


「そ!始まり!!で、俺は終わりに向かってる。きっとこれは運命の出会いだと思う」


「そーですね。こんな所で会うなんてそうそう無いですもんね」


「そそ!だから…さ」


そして憐さんは、ゆっくりと片手を伸ばして手のひらを僕に向けた。

なんとなく僕もそうした方が良いのかと釣られるように僕も片手を上げる。



パチィィン



肌と肌がぶつかる音が響く。

先程上げた手のひらに軽い痛みを感じる。


「バトンタッチ…てね」

そう言って軽く笑顔を作る憐さん



「この先どんな事があっても大丈夫な様に俺の想いを君に渡した。だから―――」









「――きっと大丈夫」




そう言い残して憐さんは向かうべき場所に歩き出した。

僕も憐さんに言われた場所に向かう事にした。

憐さんに会う前は、どうしようもなく寂しくて怖かったけど

今は、そんな恐怖などない。

きっと先程のバトンタッチのおかげだ。


そして憐さんの言っていた通り光が見えてきたので、僕はその光に向かって走り出した。



これは―――




――誰も知らない2人だけのお話



これから始まる僕の物語を語る上で大事な…大事な話なのだ。

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