第17話行商人のおじさん
僕とミカちゃんは、漸く林を抜けました。
林の中はぷよぷよの宝庫で、お陰でミカちゃんも、僕に負けない位の強さを取得しました。
道なりに少し歩くと、オードレイク伯爵領の方から馬車がやってきます。
ミカちゃんの表情が強張ったのが分りました。
大丈夫ですよ?僕が付いていますから。
馬車は、僕達を追い抜いて少し走った辺りで止まりました。
「おぉーい、お譲ちゃん1人かい?」
「子猫ちゃんと一緒ですにゃ」
「そっかぁ~1人か……丁度いい、御者席が空いているから乗っていくかい?」
「いいんですかにゃ?」
「あぁ、1人で退屈していた所だ。寧ろお願いしたい位さ」
そう言って、ミカちゃんに笑顔を向け、馬車から降りてきました。
「俺の名前はロドリゴだ!宜しくな、お譲ちゃん」
「私はミカですにゃ、宜しくお願いしますにゃ」
僕は、ミカちゃんに抱かれたまま御車席に乗ります。
「そっちの猫ちゃんも宜しくな!」
「みゃぁ~みゃぁ~!」
おじさん、僕の名前は”猫ちゃん”じゃありませんよ!
僕の名前は、子猫ちゃんです!
大切な事なので言いました――。
でも、おじさんには通じなかった様です。
おじさんが、ミカちゃんの隣に座り、手綱を叩くと、馬が嘶き歩き出しました。
ガタガタしていて、あまり乗り心地は良く無さそうです。
無さそうと言うのは、僕はミカちゃんに抱きかかえて貰っているので……。
きっとミカちゃんのお尻は、大変な事になっているかも?
このおじさんは、ミカちゃんよりは背が高いけど……この前、村に居たリーダー格の人より随分低いです。金色の、髪の毛は短く無精髭を生やしています。
僕の髭の方が立派です!
勝ちました!
温和そうな緑の瞳が、笑うと無くなります。
きっといい人ですね。
僕がそんな事を思っていると――。
僕の頭を優しく撫でながら、ミカちゃんはおじさんに話しかけました。
「ロドリゴさんは、何処まで行くんですにゃ?」
「俺か?俺は各地をこの馬車で歩いているから特に決っちゃ居ないんだが、この街道沿いの街、村々なんかを回っているのさ」
「私はこの先には行った事が無いんですにゃ。街があるんですにゃ?」
「え?そうなのか?てっきりこの先にある街の子かと思っていたよ。いったい何処から来たんだ?まさか家出とかじゃ無いよな?」
「私は、オードレイク伯爵様の街の方から――この子猫ちゃんと旅をしているにゃ」
そう言って、僕の体を撫でてくれました。
「あはは、子供の一人旅かぁ~俺が行商人を始めて親方に付いて回ったのが12歳の時だったが……ミカちゃんは何歳なんだい?」
「私は10歳ですにゃ」
ミカちゃんの歳とか初めて聞きました。
僕よりも9歳も年上だったんですね……。
でも。愛に歳の差は関係無いのです!
お婆さんも、そう言っていました。
「10歳で一人旅かぁ~気をつけないとダメだぞ!人攫いとか世の中には悪い奴もいるからな!」
「分りましたにゃ」
ガタガタ揺れ動く馬車で、そんな話をしていたおじさんでしたが、ふと気が付いた様に――こんな話をし出しました。
「悪人と言えば、昨日オードレイク伯爵の街に立ち寄った時に、女盗賊が処刑されていたんだが……何でもこの近くの村に住んでいた女達で盗賊を招き入れて村人を皆殺しにした上で金品を強奪した罪だとか言っていたな――」
「にゃ?」
「村人に成りすまして、盗賊を引き入れるとか……怖い世の中だぜ。ミカちゃんも気をつけなよ」
「気をつけるにゃ……」
あれ?
今の……ミカちゃんの村の話だよね?
何で、僕が助けた女の人達が処刑されたんだろう?
そう思っていたら、僕の体がぶるぶる揺れだした。
と思ったら――。
ミカちゃんが顔色を青くして――震えていた。
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