第15話ミカちゃんも。
魚を食べてお腹一杯になった僕達は、小川を渡りその先へと向います。
「この先にも街があるって、お爺さんが教えてくれたにゃ」
お婆さんのお家に帰れない僕は、何処へ行っても同じです。
否、言葉が正しくありませんね。
ミカちゃんの行く場所が、今の僕が居る場所です。
しばらく林の中を二人並んで歩きます。
すると前方に、あのぷるぷる揺れ動く生き物が3体やってきました。
ミカちゃんが怯えて立ち止まったので、僕が前に出て爪を飛ばし、接近し爪で引っ掻き、次々と退治しました。
「子猫ちゃん……凄い強いね!」
ミカちゃんが、僕を褒めてくれますが、まずは丸い骨を食べないと……。
ミカちゃんを守る為に、もっと沢山食べて強くならないといけませんから。
それだけは外せません。
「いつも何か食べてるにゃ。何食べてるにゃ?」
僕は下品な子猫ではありませんが、ミカちゃんが見たいと言うので――。
口から出して見せてあげる事にしました。
「そんな物、食べられるにゃ?」
ミカちゃん、これは強くなる為に必要なんですよ!
僕が食べているのだから当然、食べられます。
「私も食べてみていいにゃ?」
「にゃぁ~」
ミカちゃんにも、御裾分けです。
ミカちゃんは恐るおそる、手に取り、光に翳したりして一通り眺めた後……。
漸く、その小さな口から可愛らしい舌を出して舐めていました。
「味はしないにゃ」
そう言うと、口の中で『カリッ』と骨が割れる音がして次の瞬間には――。
吐き出していました。
あれ?何故でしょう――。
「これ食べ物じゃないにゃ」
僕は抗議します!
「みゃぁ~みゃぁ~みゃぁ~!」
「子猫ちゃんは、これが美味しいから食べてるのかにゃ?」
僕は、首を横に振りました。
「じゃ、何で食べてるのかにゃ?」
何と言えば、納得してくれるか分らないから――手の先から炎を出し、
いつもは飛ばす、透明の爪を出して見せます。
これで納得してくれるといいのですが……。
「これを食べたら、魔法が使えるようになったにゃ?」
流石、ミカちゃん!賢い女の子です。
僕の言いたい事が伝わった様なので、首肯しました。
「そ、そんな話は始めて聞いたにゃ」
そう言いながら、一度口から出した骨をミカちゃんも食べました。
ミカちゃん、それ下品な行為なんですよ!
さっき、僕もしましたけど……。
骨を食べたミカちゃんが、ぷるぷる体を震わせたと思ったら……。
「何か――力が湧いてくる感じがするにゃ!」
どうやら分ってくれた様です。
あの村では、食べないで売っていたそうです。
勿体無い!
食べれば強く成れるのに――。
「でも食べた後の舌にじゃら付く感じは苦手かにゃ」
そうなんです。
それさえ我慢すれば……僕がずっと思ってきた事もミカちゃんと同じでした。
「でも、もっと早く知っていたら村の皆が死ななくても済んだのかにゃ」
「みゃぁ~みゃぁ~!」
ミカちゃん、気持は分りますが――終わった事ですよ!
と、前に何かの時にお婆さんが言っていました。
何の時だったのでしょう?
どうやら忘れてしまったようです……。
でも、僕は賢い子猫なんですよ!
これからは、ミカちゃんも強くなって貰えば……この前みたいに盗賊に攫われて箱の中に押し込まれたりする事にはならないでしょう。
僕だけ強いのもねっ!
さて、再び歩き出しました。
まだ夏前だと言うのに、この林の草は金色です。
お婆さんの近所の草は、緑一色だったのに……何故でしょう?
その答えは直ぐに、ミカちゃんによって解かれました。
「もう秋だにゃ、これから寒くなるのに、お家ないにゃ……」
そろそろ夏だったのに……もう秋らしいです!
いったい、今年の季節はどうなっているんでしょうか?
一度、お天気おねぇさんに確認したいですね!
でも、困りました。
僕が拾われた時は冬だったので――。
お婆さんが拾ってくれた時に、うちは床暖房だから床下も暖かいでしょ?
そう言っていて、実際に温かかったのですが……。
もう冬なら、僕は1歳ですね!
1年経つのは早いです。
僕はミカちゃんが寒く無い様に、火を起せます。
きっと大丈夫ですよ!ミカちゃん。
僕がミカちゃんに見えるように、火を点けるとミカちゃんが気づいてくれた様です。
「子猫ちゃんが、魔法で温めてくれるにゃ?」
「みゃぁ~!」
「ありがとうにゃ」
そう言って僕を抱き締めてくれました。
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